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スマートフォンで撮った演奏動画を見返したとき、映像はきれいなのに音だけが薄い。
演奏の余韻が消えていて、ホールの響きが平らになっている。
そう感じたことがあれば、原因は撮り方ではありません。
マイクです。
この記事では、なぜ内蔵マイクや本体に直接挿すマイクでは楽器の音が痩せるのか、外部マイクを挿して録るところまでの手順、機種ごとの接続の違い、そして置き方の目安をまとめます。

内蔵マイクで音が痩せる理由
スマートフォンには、通話を快適にするための処理が入っています。
周囲の音を抑え、人の声の帯域を持ち上げる働きです。
電話としては正しい設計です。
ところが音楽を録るとき、この処理は残したいものまで削ります。
演奏の余韻、ホールの響き、楽器の胴鳴り。
その場の空気をつくっている要素が、不要な音として扱われます。
結果として、平らで距離感のない音になります。
もう一つの制約は物理です。
本体の中に収めるため、振動板を大きくできません。
振動板が小さいほど、小さな音の変化を捉える力は落ちます。
本体に直接挿すマイクでも足りない理由
端子に直接挿す小型のマイクは、自撮りや会議には向いています。
楽器の演奏動画には、構造上の弱点があります。
演奏動画を撮るとき、全身や楽器全体を映すために、スマートフォンは自分から1から2メートル離れた三脚に置きます。
本体に挿したマイクは、本体と一緒に遠ざかります。
遠ざかったマイクは、楽器の音より部屋の反射を多く拾い、輪郭がぼやけます。
録音で最初に効くのは、マイクを音源に近づけることです。
有線の外部マイクなら、スマートフォンは離れた場所に置いたまま、マイクだけを楽器のそばに置けます。
外部マイクを挿すと何が変わるか
マイク入力に外部マイクを挿すと、通話用の処理を通らない経路で音が入ります。
左右の広がりが出て、奥行きが戻ります。
空音開発では、プラグインパワーで動くステレオマイク P-86S を製作しています。
プラグインパワーとは、マイク入力の端子からマイクへ供給される小さな電源のことです。
対応するスマートフォンやハンディレコーダーなら、電池も外部電源も使わずに、挿すだけでコンデンサーマイクが動きます。
P-86S は無指向性です。
正面の音だけを切り取るのではなく、その場の響きごと記録します。
無指向性には近接効果が無いので、楽器に近づけても低域が持ち上がらず、距離を変えても音色が変わりません。
一本で左右が揃うため、二本を並べて角度を合わせる作業が要りません。
端子のない機種で接続する手順
イヤホン端子のあるスマートフォンなら、そこへ挿すだけです。
端子のない機種では、変換アダプタを介して接続します。
ここに一つ注意点があります。
変換アダプタには、音を出すことしかできないものがあります。
マイク入力に対応していないアダプタでは、挿しても録音できません。
購入するときは、マイク入力に対応していると明記されたものを選んでください。
録音アプリの選び方
標準の録音アプリでも動作します。
ただし多くの標準アプリは、保存のときに音を圧縮します。
外部マイクで捉えた細かい響きが、保存の段階で削られます。
非圧縮で保存できる録音アプリを使うと、マイクの性能をそのまま残せます。
設定でファイル形式を選べるものを探してください。
WAV や AIFF が選べれば非圧縮です。
動画と一緒に録るなら、標準のカメラアプリが外部マイクの入力を受け付ける機種であれば、そのまま映像と一緒に録れます。
受け付けない機種では、録音アプリで別に録り、あとで映像と合わせてください。
置き方の目安
楽器を録るとき
楽器のそば、目安として20から50cmの位置に置きます。
近づけすぎると特定の弦や管だけが大きくなり、楽器全体の鳴りが崩れます。
ピアノなら、屋根を開けて少し離れた位置から。
声なら、口元の正面を外して斜めから狙うと、息が直接当たる音を避けられます。
屋外で録るとき
風が当たると、低い帯域に大きな音が乗ります。
風防を付け、風上に背を向けて構えてください。
無指向性のマイクは、その場の音を広く拾います。
録りたい音に近づくほど、周囲の音との差がはっきりします。
その先へ進むなら
P-86S をスマートフォンに直接挿すだけでも、内蔵マイクとの差は明確です。
配信を本格的に始めたい、あるいは音源として残したいと考えるなら、次の段階があります。
オーディオインターフェース機能の付いたレコーダーや、据え置きのインターフェースを経由させると、ノイズはさらに減り、音の立体感が変わります。
据え置き型を探している方は、XLRマイクの真価を引き出す高音質オーディオインターフェイスとマイクプリアンプにまとめています。
方式そのものから選びたい方は、ステレオマイクの選び方と方式を先に読んでください。
最後に
演奏動画で最後まで見てもらえるのは、画質が良い動画ではなく、音が良い動画です。
高価なカメラを買う前に、まずマイクを楽器のそばに置いてみてください。



