KUON SYNTH
合成方式そのものを学ぶ、演奏できる教科書。
倍音を豊かに含む波形から、フィルターで不要な成分を削り取って音を彫刻する方式。1960〜70 年代のアナログシンセの基本原理であり、いまも最も直感的な音作りの出発点。
試してみるノコギリ波を選び、音を伸ばしながらカットオフをゆっくり下げる。倍音が削られて音が丸くなる様子が、スペクトラムにそのまま現れる。
波形 (オシロスコープ)
倍音スペクトラム
鍵盤を弾くと、音の形がここに現れる。
オシレーター
音の原料。波形の形が、そのまま倍音の構成を決める。
波形 1
波形 2
フィルター
カットオフより上の倍音を削る。レゾナンスはカットオフ付近を強調し、シンセ特有の癖を生む。
スロープ
アンプ・エンベロープ
音量の時間変化。アタックが長ければ弦楽器のように、短ければ打楽器のように立ち上がる。
フィルター・エンベロープ
音色の時間変化。鍵を押した瞬間から音の明るさがどう動くかを決める。
LFO (ゆらぎ)
数 Hz のゆっくりした波で他のパラメータを揺らす。音程ならビブラート、音量ならトレモロ、フィルターならワウになる。
行き先
波形
演奏
モノは旋律をレガートで繋ぎ、グライドが音程の移り変わりを滑らかにする。サステインは Space キーや MIDI ペダルでも踏める。
モノ (単音)
ベロシティカーブ
サステイン (Space)
音律
スプリット / レイヤー
スプリットは分割点より下を B が、上を A (いま編集中の音) が受け持つ。レイヤーは同じ鍵で A と B が同時に鳴る。B の音色は演奏セットから選ぶ。
空間と出力
ディレイは山びこのような反復、リバーブは空間の残響。音を空間に置く仕上げの工程。
C3
C4
C5
マウス・タッチのほか、A〜K の列が白鍵、W E T Y U の列が黒鍵。Z / X でオクターブ移動。MIDI 鍵盤は対応ブラウザで自動接続。
音色の図鑑
すべての音色に、設計の言葉を添えて。
図鑑を開いている…
シンセサイザー小史 — 音を合成するという夢
- 1897電流で音を合成する最初の巨大楽器が作られる。重さは数百トン、聴衆は電話回線の先にいた。
- 1906三極真空管が発明される。電気信号を「増幅する」というこの一歩がなければ、以後のすべての電子楽器は存在しない。
- 1920空間に手をかざすだけで演奏する電子楽器が発明され、電子音が初めて「楽器」として舞台に立つ。
- 1928鍵盤とリボンで歌う電子楽器がパリに生まれ、管弦楽の中に指定席を得る。電子音が「作曲家の楽器」になった最初の例。
- 1935回転する歯車で倍音を一本ずつ作る電気オルガンが発売される。引き棒 (ドローバー) は、量産された最初の加算合成である。
- 1939人の声を帯域に分解して合成し直す装置が、通信のために作られる。声を「分析できる信号」として扱う発想は、のちに音楽へ流れ込む。
- 1948パリの放送局で、録音された物音そのものを素材に音楽が組み立てられる。楽器を経由しない音楽の誕生。
- 1951各地の放送局に電子音楽スタジオが生まれ、発振器と磁気テープを素材に、合成音だけの音楽が作曲され始める。
- 1955パンチ紙で音高と音色を指定する、部屋ほどの大きさの音響合成機が作られる。「シンセサイザー」という名が楽器に付いた最初期の例。
- 1957計算機が初めて音をプログラムで生成し、短い旋律を歌う。今日のあらゆるソフトウェア音源の、遠い祖先である。
- 1964電圧で音程・音色・音量を制御するモジュラー方式が確立。ケーブルで回路をつなぎ替えること自体が作曲になる。
- 1968シンセサイザーだけで演奏されたバッハのアルバムが世界的に売れ、この楽器の名前が初めて一般の家庭に届く。
- 1970スタジオから持ち出せる小型のアナログシンセが登場。鍵盤楽器のひとつとして、ステージとレコードに一気に広がる。
- 1973日本を含む各国のメーカーが参入し、価格が下がり始める。スタジオの特権だった楽器が、働く音楽家の道具になっていく。
- 1978和音の弾けるポリフォニック機と音色メモリーが実用化し、シンセは「一音の楽器」から「オーケストラ」へ近づく。
- 1979録音した音を鍵盤に割り当てて演奏する高価な機械が現れる。「音そのものを楽器にする」——サンプリングという発想の始まり。
- 1983MIDI 規格が生まれ、メーカーの違う楽器同士が共通の言葉を持つ。40 年後のいまも現役という、電子楽器史でもっとも長寿の合意。
- 1983同じ年、FM 方式のデジタルシンセが世界を席巻し、アナログの時代がいったん終わる。硬質で澄んだ電気ピアノと鐘の音が、この年代の音になる。
- 1987サンプラーが手の届く価格になり、既存のレコードから音楽を組み立てる文化——ヒップホップ——の中心楽器になる。
- 1988サンプリングと PCM 音源が主流になり、「本物の楽器の音」が鍵盤の上に載るようになる。
- 1990sウェーブテーブルとバーチャルアナログが台頭。デジタルが往年のアナログ回路を再現し始め、過去と未来が合流する。
- 1997パソコンの処理能力が実時間の音合成に追いつき、実用的なソフトウェアシンセが現れる。回路が、コードに置き換わり始める。
- 2000sシンセはソフトウェアになり、DAW の中に無数に住むようになる。ハードの名機たちも次々とソフトで蘇る。
- 2010s一巡りして、アナログ回路の手触りが再評価される。小さな工房のモジュラーシンセが世界中で復活し、ケーブルの森が帰ってくる。
- 2020sブラウザだけで動くシンセが生まれ、楽器は URL ひとつで手元に届くものになった。いま、あなたが触れているのがそれである。