音を大きくして、音を変えない。その仕組み。
マキシマイザーは、曲の音量を上げるための道具です。難しいのは「大きくしても、元の音を変えないこと」。KUON MAXIMIZER がそれをどう実現しているのかを、四つの仕組みに分けて、できるだけ平易に説明します。

低・中・高を、別々に扱う
音を上げるとき、ひとつの帯域でまとめて抑える道具では、低音の大きな一撃のたびに高音まで一緒に沈みます。聴くと「音が波打つ」ように感じる、いわゆるポンピングです。KUON MAXIMIZER は入ってきた音を、低音・中音・高音の三つの帯域に分け、それぞれを独立して抑えます。低音のキックが、高音のきらめきを巻き込みません。
帯域を分けるフィルターには、位相を歪ませない「リニアフェーズ FIR」を使います。ここが要点です。ただ分けるだけでなく、三つの帯域を足し戻したとき、元の音に完全に戻る(完全再構成)ように設計してあります。分けたことによる色付けが残りません。
越えそうな未来を、先に読む
天井を絶対に越えさせないためには、音が大きくなる少し前から、あらかじめ音量を下げておく必要があります。KUON MAXIMIZER はごく短い時間だけ音を「先読み(ルックアヘッド)」し、これから天井を越えそうな山を見つけると、その手前からなめらかに音量を落として、山が天井にちょうど収まるようにします。
この「必要なだけ下げる」計算に、移動最小(moving-minimum)という方法を使っています。先読み窓の中でいちばん深く下げるべき値を常に取り出し続けるため、天井の超過が構造的にゼロになります。「たぶん収まっている」ではなく、仕組みとして超えないのです。
点と点の「間」に、ピークは隠れている
デジタル音声は、たくさんの点の並びで記録されています。ところが再生するとき、その点の間はなめらかな曲線でつながれます。すると、記録された点のどれよりも高いピークが、点と点の間に現れることがあります。これがインターサンプルピーク、いわば「本当のピーク」です。点の値だけを見て抑える道具は、この隠れたピークを見逃し、変換後に歪みを出すことがあります。
KUON MAXIMIZER は 4 倍のオーバーサンプリングで点と点の間を再現し、この本当のピークまで検出してから抑えます。放送・配信で標準となっている ITU-R BS.1770 の考え方に沿った、真ピーク(dBTP)基準の制御です。
抑えていない瞬間は、入力と同じまま
良いマキシマイザーの条件は、必要なとき以外は何もしないことです。KUON MAXIMIZER は、天井に達していない区間では入力の波形をそのまま通します。処理の前後で、抑えていない瞬間の波形が数値的に一致する(透明性誤差ゼロ)。弦の一本、息の一息、ホールに消えていく余韻 ── 触る必要のないところには、触りません。
帯域ごとの効きを、目で確かめる
三つの帯域を別々に抑えているからこそ、KUON MAXIMIZER は「どの帯域が、いつ、どれだけ効いているか」を時間の流れとして見せられます。低・中・高・全体のゲインリダクションが、あなたの音源の上で動きます。音でしか判断できない道具では得られない、理解の手がかりです。