目次
ピアノの連弾や2台ピアノを録るとき、音源が横に広がり、二人のバランスをどう捉えるかで悩みます。
一台のピアノとは録り方が変わるからです。
無指向性ペアで位置を決める判断の枠組みを渡します。
ピアノ連弾と2台ピアノ、録音の何が難しいのか
連弾は一台のピアノを二人で演奏します。
響板全体から音が出て、低音から高音まで広い範囲をカバーします。
二人の手が近接するため、個々の演奏を分離して録る必要はありませんが、一台のピアノを弾くより音源の幅は広くなります。
2台ピアノは二台のピアノが並びます。
音源の間隔が広がり、左右のバランスと中央の定位が課題になります。
AB方式で間隔を広げすぎると中央が薄くなるという問題が生じます。
低い周波数は全方向に広がり、周波数が上がるほど指向性が鋭くなります。
ピアノの低域は可聴周波数範囲の下限 20 Hz 近くまで下がります。
蓋を開けた状態では、蓋が反射板として働き、開き具合で音の広がり方が変わります。
マイクはどこに置くか
基本は、無指向性マイク2本を離して配置するAB方式(スペースドペア)です。
ワンポイント録音とは?
1組のマイクだけで全体を収める方法と原理でも触れているように、マイクを増やさず位置で音を決める考え方が、この編成に合います。
距離は、直接音と残響音のバランスで決めます。
ホールの臨界距離(直接音と残響音のレベルが等しくなる距離)を目安に、そこから前後に動かしながら、演奏を実際に聴いて判断します。
近づければ直接音の輪郭が立ち、離せば空間の響きが増します。
部屋によって臨界距離は変わるため、現場で耳を使って決めます。
高さは、ピアノの響板を見下ろす位置を基準にします。
蓋を開けているなら、蓋の反射で上方向にも音が来るため、上げすぎると直接音が減ります。
演奏者の視界を遮らない高さという実用面も考慮します。
間隔は、捉えたい音源の幅で決めます。
連弾ならピアノの全長をカバーできる間隔、2台ピアノなら二台の外側までの幅を基準にします。
間隔が広いほど広がりは増しますが、広げすぎると中央が薄くなります。
3対1の法則(マイク間の距離を、マイクから音源までの距離の3倍以上にする目安)を参考に、間隔と距離のバランスをとります。
指向性は無指向性が第一の候補です。
近接効果が生じないため距離を自由に選べ、低域まで素直に収まり、全方向から等しく拾うため響板全体と部屋の響きをバランスよく含められます。
なぜその位置なのか
AB方式に無指向性を組み合わせる理由は、ピアノの性質と編成の広がりに合致するからです。
第一に、近接効果がありません。
単一指向性のマイクを離しても、無指向性のような距離に依存しない低域特性は得られません。
ピアノの低域は可聴周波数範囲の下限近くまで下がるため、近接効果のない無指向性が有利です。
第二に、低域まで素直に収まります。
無指向性マイクは原理的に低域の減衰が少なく、ピアノの豊かな倍音を土台となる低域から正しく捉えられます。
第三に、空間の響きを含めて捉えられます。
AB方式の時間差がステレオの広がりを作り、無指向性なら部屋の響きも自然に入ります。
直接音と残響音のバランスを位置で決められるのが利点です。
距離と間隔には物理的な関係があります。
距離が近いほど直接音が強くディテールが際立ち、遠いほど残響が増して全体が溶け合います。
間隔が距離に対して広すぎると中央の定位が左右に分離し、狭すぎるとAB方式の広がりが失われます。
この二つを部屋と編成に合わせて調整するのが、録音位置の決定の本質です。
起きやすい失敗と、その避け方
一つめは、近づけすぎです。
打鍵のノイズやペダルの操作音、演奏者の呼吸まで拾ってしまいます。
ピアノは響板全体が音源であり、鍵盤の真上だけが録音位置ではありません。
距離をとって響板全体を捉える意識が要ります。
この点はピアノ発表会 録音 方法 客席から 無指向性 マイク配置でも触れています。
二つめは、離しすぎです。
ホールの残響が支配的になり、演奏の輪郭がぼやけます。
臨界距離を大きく超えると、距離をさらに離しても音の変化がほとんどなくなります。
残響時間が長い空間では、距離の上限に早く達します。
三つめは、間隔を取りすぎて中央が薄くなることです。
とくに2台ピアノで起きやすい失敗です。
中央に定位すべき音(両ピアノが同時に鳴る和音の中心、低音の共通部分)が抜けてしまいます。
マイク間隔を音源までの距離に対して広げすぎないことを、一つの目安にします。
四つめは、蓋の状態を考慮しないことです。
全開なら音は上と前へ放射され、半開ならやや抑えられます。
閉じていると音の抜けが減り、マイク位置や指向性を切り替える必要が出ます。
録音前に蓋の開き具合を確認し、それに合わせて位置を選びます。
どういうマイクが向くか
無指向性のマイク2本を組にしたセットが、この編成に向きます。
近接効果が生じないため距離を自由に選べます。
低域まで素直に収まるため、グランドピアノの低弦の重さと倍音構造を損なわずに捉えられます。
全方向を等しく拾うため、響板からの直接音とホールの残響をバランスよく含められます。
無指向性と単一指向性の使い分け 録音で何が変わるのかでは、両者の特性の違いを物理的な根拠から整理しています。
2本の無指向性マイクは同じ型式のものを揃えます。
左右の特性が揃うことが安定したステレオイメージの前提です。
ファントム電源(IEC 61938 が定める 48 V、抵抗値 6.81 kΩ)のコンデンサーマイクが一般的です。
最大音圧レベルにも余裕があるものを選びます。
ピアノのフォルティッシモは大きな音圧になるからです。
単一指向性のペア(ORTF方式、間隔 17 cm、開き角 110 度など)も選択肢にはなりますが、そのときは近接効果と軸外れの周波数特性を考慮する必要があります。
残響が多い会場で直接音をより多く取りたい場合には、単一指向性が有利に働くこともあります。
最後に
無指向性ペアのAB方式は、連弾や2台ピアノの広がりを自然に捉える基本の考え方です。
ただし距離と間隔の正解は、会場と演奏によって変わります。
臨界距離の内側と外側、どちらの音を優先しますか。
その判断を、実際に耳で確かめてみてください。
弾かなくなったピアノを手放すときの流れはピアノ買取はどこがいい。
相場の決まり方と搬出までの流れにまとめています。

