目次
コンクールの提出動画を、撮影業者に依頼しようか迷っているなら、先に読んでほしいことがあります。
多くの場合、自分で撮ったほうが良い結果になります。
技術の問題ではなく、コンクールの規定そのものが、業者の技術を発揮できない形になっているからです。
編集は禁止。
カット割りも、色の調整も、音の差し替えもできない。
求められるのは、カメラを固定した一発撮りです。
プロが持ち込む技術のほとんどが、規定によって封じられています。
そのうえで、規定の中に音質を上げる余地がひとつだけ残されています。
それを使えば、スマホ一台と数万円の機材で、業者に頼んだのと変わらない、あるいはそれ以上の提出動画が作れます。
この記事は、その全手順です。
なぜ自分で撮ったほうがいいのか
業者に頼んで得られるのは、主に三つです。
良いカメラ、良い照明、そして撮影の段取り。
しかしコンクールの提出動画では、カメラ性能の差はほとんど出ません。
固定した一発撮りで、手元と全身が判別できればよく、映画のような映像は求められていないからです。
近年のスマートフォンのカメラは、この要件を十分に、、、いえ、十分すぎるほどに満たします。
照明も、日中の自然光と部屋の照明で足ります。
むしろ凝った照明は、顔が判別しにくくなるなど規定違反のリスクを生みます。
段取りは、この記事が代わりを務めます。
残る差は、たったひとつです。
音。
ここだけは、スマホの内蔵マイクでは埋まりません。
そして、ここを埋める方法が規定の中に用意されています。
編集は禁止。
でも外部マイクは禁止されていないことがほとんどです(コンクールごとの規定を必ず確認してください。)
多くの人が誤解している境界線を、先に整理しておきましょう。
:::kuon compare title: 提出動画で禁止されること・問題にならないこと columns: 行為 | 判定 | 理由 row: カット・つなぎ編集 | 禁止 | 一発撮りの要件に反する row: 別に録音した音声への差し替え | 禁止 | 別撮り音声の使用にあたる row: 音量調整・EQ・リバーブ | 禁止 | 音声加工にあたる row: 明るさ・色の補正 | グレー | 要項に記載がなければ主催者に確認 row: 撮影機材への外部マイク接続 | 問題になりにくい | 同時録音であり編集ではない row: 提出形式に合わせたファイル変換 | 問題になりにくい | 内容を変えない形式変換 note: 判定は一般的な要項の記載にもとづく整理です。
最終的な可否は主催者の判断によります。
必ずご自身が参加する部門の要項を確認してください。
:::
要項が禁じているのは、録音した後にファイルへ手を加えることです。
外部マイクを使うのは、録る前に条件を良くする行為であり、楽器を選ぶことや部屋を選ぶことと同じ次元にあります。
内蔵マイクで撮らなければならない、と書いてある要項はまずありません。
別撮りした音を後から合わせるのは、失格になります
ここは絶対に間違えないでください。
レコーダーで音だけを別に録り、後から映像に合わせる方法は使えません。
演奏が同一であっても、これは別録り音声の使用であり、多くの要項が明確に禁止しています。
同期作業を行った時点で編集です。
「レコーダーのほうが音が良いから」という理由でこれをやると、失格の可能性があります。
したがって、満たすべき条件はひとつに絞られます。
外部マイクの音が、撮影しているその機材の中に、その瞬間に記録されていること。
スマホ一台で音を良くする方法
条件を満たす構成があります。
レコーダーを、スマホのオーディオインターフェースとして使う方法です。
外部マイクをプラグインパワー対応のレコーダーに挿し、そのレコーダーをUSBケーブルでスマホに繋いでオーディオインターフェースモードにします。
この状態でスマホのカメラアプリで録画すると、映像と外部マイクのステレオ音声が、スマホ内のひとつの動画ファイルに同時に記録されます。
これは別撮りではありません。
同期作業もありません。
編集ソフトも通しません。
録画を止めた瞬間に、提出できるファイルが完成しています。
これは裏技ではなく、メーカーが想定している正規の使い方です。
TASCAMは公式に、DR-05XPについて「iPhoneとUSB接続することで収音したステレオ音声で動画収録ができます」と案内しています。
:::kuon stat title: この方法でできること item: 1 | ファイル | 映像と外部マイク音声が同一ファイルに同時記録 item: 0 | 回 | 編集ソフトを通す回数 item: 4 | 点 | 必要な機材(スマホ・三脚・レコーダー・マイク) item: 2 | m | カメラに必要な距離。
マイクはこの制約を受けません :::
カメラは離す、マイクは近づける。
この分離がすべてを決める
この構成の本当の価値は、音質そのものより、カメラとマイクを別の場所に置けることにあります。
要項が求めるのは、手元が見え、全身または上半身が入り、顔が判別できる映像です。
そのためにカメラは2メートル以上離す必要があります。
ところが2メートル離れた位置は、ピアノを録るには最悪の距離です。
部屋の反射が支配的になり、打鍵の輪郭も、ペダルの余韻も失われます。
スマホで撮った演奏が薄く聞こえるのは、演奏の問題でも機材の問題でもなく、単に距離の問題です。
この構成なら、スマホは規定が要求する位置に固定したまま、マイクだけを楽器のそばに置けます。
両者はUSBケーブルで繋がっているので、離れていても同時録音です。
業者に頼んでも、同じことをしなければ同じ音にはなりません。
そして多くの映像業者は、音のためにこの分離を行いません。
ここが、自分で撮ったほうが良い結果になる理由です。
自分で撮るために必要な機材は四つだけ
スマートフォン、三脚、プラグインパワー対応でUSBオーディオインターフェース機能を持つレコーダー、そして外部マイク。
これだけです。
マイクは、無指向性のAB方式ステレオを選んでください。
指向性マイク1本では楽器の直接音しか捉えられず、部屋の響きが失われて平板な音になります。
審査で聴かれているのは、楽器の音と、その音が空間でどう鳴っているかの両方です。
:::kuon mic-cta product: p-86s cta: 製品ページを見る :::
接続の手順
この順番を守ってください
順序を誤ると内蔵マイクの音が記録されます。
本番で気づくと取り返しがつかないので、必ずこの順で行ってください。
はじめに、レコーダーの電源を入れ、メニューからプラグインパワーをONにします。
入力設定の中にあります。
この設定を忘れると、マイクに電源が届かず、ほとんど音が入りません。
次に、外部マイクをレコーダーのMIC/EXT端子またはMIC/LINE端子に接続します。
続いて、入力ソースが外部マイクに切り替わっていることを画面で確認します。
多くの機種は自動で切り替わりますが、目視で確かめてください。
そのうえで、レコーダーの電源設定を電池駆動にします。
USB接続時にスマホから給電すると、スマホのバッテリーが急速に減り、長時間の撮影で問題が出ます。
レコーダーをUSBオーディオインターフェースモードに切り替えます。
機種によってUSBマイクモード、オーディオI/Fモードなどと表記されます。
最後にUSBケーブルでスマホと接続し、カメラアプリを起動します。
そして必ず、30秒のテスト録画を行ってください。
撮った動画をその場で再生し、外部マイクの音が入っているか、左右のステレオになっているか、最も強い音で割れていないかを確認します。
この確認を飛ばすことが、最も多い失敗の原因です。
どのレコーダーを買えばいいか
プラグインパワーに対応していても、USBオーディオインターフェース機能を持たない機種はこの方法に使えません。
旧世代機の多くが該当します。
:::kuon table title: この方法に使えるレコーダー columns: 型番 | メーカー | 32bitフロート | USB端子 align: left | left | left | left row: H1essential | ZOOM | 対応 | USB-C row: H4essential | ZOOM | 対応 | USB-C row: H6essential | ZOOM | 対応 | USB-C row: H5studio | ZOOM | 対応 | USB-C row: H1 XLR | ZOOM | 対応 | USB-C row: M4 MicTrak | ZOOM | 対応 | USB-C row: H1n | ZOOM | | micro USB row: DR-05XP | TASCAM | 対応 | USB-C row: DR-07XP | TASCAM | 対応 | USB-C row: Portacapture X6 | TASCAM | 対応 | USB-C row: Portacapture X8 | TASCAM | 対応 | USB-C row: DR-05X | TASCAM | | micro USB row: DR-07X | TASCAM | | micro USB note: DR-100MKIIIやH2nなど、プラグインパワーに対応していてもUSBオーディオインターフェース機能を持たない機種はこの方法に使えません。
全機種の一覧は「プラグインパワー対応レコーダー一覧」をご覧ください。
:::
ここで大切なことを言います。
この用途では、レコーダーの内蔵マイクの性能は一切関係ありません。
使うのは外部マイクだからです。
同じ理由で、機種による音質差もほとんど出ません。
音を決めるのはマイクと、その置き場所です。
つまり選ぶ基準は三つだけです。
USBオーディオインターフェース機能があること、プラグインパワーに対応していること、電池駆動でUSB接続できること。
この三つを満たせば、最も安い機種で十分です。
高価な上位機が必要になるのは、将来XLRマイクを使う予定がある場合だけです。
:::kuon affiliate name: ZOOM H1essential image: amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/B0CSL4PXDV?tag=kuonrnd-22 note: 三つの条件を最小・最安で満たす一台。
32ビットフロート対応なので、入力レベルの設定ミスによる音割れが実質的に起こりません。
最初の一台としてこれで足ります。
:::
:::kuon affiliate name: TASCAM DR-05XP image: amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/B0DTJVLCFT?tag=kuonrnd-22 note: iPhoneとのUSB接続によるステレオ動画収録を、メーカーが公式に案内している機種。
設定手順のサポート記事も公開されているため、初めてでも迷いにくい選択です。
:::
:::kuon affiliate name: ZOOM H5studio image: amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/B0DZXF4RKR?tag=kuonrnd-22 note: 将来XLRマイクや多点収録に進む可能性があるなら上位機を。
プラグインパワー入力とUSBオーディオインターフェース機能を備えつつ、本格的な収録にも対応します。
:::
iPhoneとAndroidの違い
iPhoneのUSB-C世代は、USB-C同士のケーブルで直結できます。
Lightning世代は、Apple純正のUSBカメラアダプタを介する必要があります。
いずれもレコーダーは電池駆動にしてください。
Androidは注意が必要です。
標準のカメラアプリがUSB音声入力を無視する機種が多く、外部入力に対応したカメラアプリを使う必要があります。
機種による差が大きいため、本番の数日前に必ずテストしてください。
確実性を優先するなら、iPhoneでの撮影を推奨します。
スマホで撮るとき、マイクをどこに置くか
ここが音質を最も左右します。
機材より、位置です。
:::kuon table title: 楽器別のマイク位置の目安 columns: 楽器 | 位置 | 距離・高さ align: left | left | left row: グランドピアノ | 屋根の開口側、鍵盤中央のやや右手前 | 1.5〜2m / 高さ1.5〜1.8m row: アップライトピアノ | 奏者の頭上後方、または背面側 | 1〜1.5m / 高さ1.6m前後 row: ヴァイオリン・ヴィオラ | 奏者の斜め前方、やや見下ろす角度 | 1.5〜2m / 高さ2m前後 row: チェロ | 奏者の正面やや上、駒の延長線を外す | 1.5〜2m / 高さ1.5m row: 管楽器 | ベルの正面を外し、斜め45度 | 1.5〜2m / 高さ胸〜口元 row: ギター・ウクレレ | サウンドホール正面を外し、12フレット寄り | 0.5〜1m / 高さ楽器と同じ row: 声楽 | 口の高さよりわずかに上、正面 | 1〜1.5m / 高さ口元+10cm note: いずれもマイクを壁から1m以上離してください。
壁際では反射音が重なり、音がこもります。
同じ部屋でも、マイクを50cm動かすだけで音は大きく変わります。
本番前に数パターン試して、耳で決めてください。
:::
近づけすぎると、打鍵音や弓のノイズ、息の音が過剰になります。
離しすぎると、部屋の響きに音が埋もれます。
判断に迷ったら、その部屋で自分が「一番よく聴こえる」と感じる場所に立ち、耳の高さにマイクを置いてください。
人の耳は、たいてい正しい答えを知っています。
撮影当日にやること
まず要項をもう一度読み直してください。
撮影期間の指定、氏名を名乗る必要の有無、縦撮影と横撮影の指定、演奏時間の上限。
これらは主催者ごとに規定が食い違う項目で、間違えると内容以前に弾かれます。
機材面では、スマホを機内モードにして通知を切り、三脚の水平を取り、露出とフォーカスをロックし、HDRをオフにします。
HDRが有効だと、提出先で正しく再生されないことがあります。
そして画面の隅まで見て、楽譜や賞状、名前の入った持ち物などが写り込んでいないか確認してください。
個人情報の写り込みを禁止している要項は多くあります。
最後に、30秒のテスト録画と再生確認。
これだけで、失敗のほとんどは防げます。
規定そのものの詳細は「コンクール提出動画の規定と作り方」、カメラの高さと画角の決め方は「演奏動画のカメラ位置と画角」にまとめています。
業者に頼んだほうがいいケースもあります
公平のために書いておきます。
自分で撮るべきでない場合があります。
ホールを借りての収録で、音響や電源の扱いに不安がある場合。
締切が迫っていて、機材を試す時間がない場合。
撮影のトラブルで演奏をやり直すことになったときに、責任を負いたくない場合。
そして、本人が演奏に集中するために、機材のことを一切考えたくない場合。
これらに当てはまるなら、業者に依頼するのは合理的な選択です。
ただしその場合も、依頼前に要項を渡し、編集を行わないことと、外部マイクを撮影機材に接続して同時録音してもらえるかを確認してください。
この二点を伝えられるかどうかで、結果がまったく変わります。
提出が終わったら、公開用が作れます
提出用のファイルには一切手を加えられませんが、同じ演奏を公開用の動画として仕上げることには何の制約もありません。
YouTubeへの投稿、教室での記録、プロフィール用の演奏動画。
ここでは音の調整も色の仕上げも自由です。
:::kuon signup title: 公開用の動画は、無料で仕上げられます body: KUON VIDEO SYNC は、映像と音声の同期、ラウドネスの最適化を自動で行います。
映像は再圧縮しません。
無料登録で 2GB / 30分までご利用いただけます。
提出用ファイルには使用しないでください。
cta: 無料で登録する :::
:::kuon faq title: よくある質問 q: コンクールの提出動画は自分で撮ってもいいのですか a: はい。
要項が求めているのはカメラを固定した一発撮りと、手元・全身が判別できる映像であり、撮影者や撮影機材の指定はありません。
スマートフォンでの撮影を認めている主催者がほとんどです。
念のため、ご自身の参加する部門の要項をご確認ください。
q: 外部マイクを使うと編集扱いになりませんか a: なりません。
編集とは録音後にファイルへ手を加えることを指し、外部マイクは録音時の機材選択です。
撮影している機材に接続して同時に記録している限り、別撮りにも該当しません。
ただし最終判断は主催者にあります。
q: レコーダーで別に録った音を後から合わせてはいけませんか a: いけません。
別録り音声の使用にあたり、多くの要項が明確に禁止しています。
同期作業を行った時点で編集です。
この記事で紹介しているのは、撮影機材の中に同時記録する方法です。
q: 内蔵マイクの良いレコーダーを買うべきですか a: この用途では不要です。
使うのは外部マイクなので、内蔵マイクの性能は結果に影響しません。
USBオーディオインターフェース機能、プラグインパワー対応、電池駆動の三点を満たす最も安価な機種で十分です。
q: スマホの内蔵マイクではだめですか a: 提出は可能ですが、強奏で音が割れやすく、ピアノの低音や余韻が捉えられません。
カメラを2メートル以上離す必要があるため、内蔵マイクも同じ距離になってしまうことが根本的な原因です。
外部マイクなら、この距離の制約から音だけを切り離せます。
q: Androidでも同じ方法が使えますか a: 機種によります。
標準カメラアプリがUSB音声入力に対応していない場合があり、外部入力対応のカメラアプリが必要になります。
対応状況の差が大きいため、本番前の十分なテストを推奨します。
q: 撮影にいくらくらいかかりますか a: マイクとレコーダーを新規に揃える場合で、おおむね三万円前後です。
一度買えば次回以降の撮影費はかかりません。
撮影業者への依頼が一回あたり数万円かかることを考えると、二回目以降は費用が逆転します。
:::
まとめ
コンクールの提出動画で、編集は使えません。
だからこそ、撮影した瞬間にすべてが決まります。
そして規定の中に、音質を上げる余地がひとつだけ残されています。
撮影機材に外部マイクを接続して、同時に録ること。
プラグインパワー対応レコーダーをスマホのUSBオーディオインターフェースとして使えば、これが実現します。
必要なのは、スマホと三脚と、レコーダーと、マイクだけ。
カメラは規定が求める位置に、マイクは楽器のそばに。
この分離ができれば、業者に頼まなくても、審査に通る音と映像が撮れます。
対応レコーダーの全機種一覧は「プラグインパワー対応レコーダー一覧」にまとめています。
当サイトはAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です。
記事内の一部リンクを経由して商品を購入された場合、当サイトに収益が発生します。
掲載している製品の対応状況・評価は、メーカー公式資料および実機確認にもとづくものであり、収益の有無による影響を受けていません。
本記事は一般的な要項の記載にもとづく解説であり、特定のコンクールにおける可否や審査結果を保証するものではありません。
必ずご自身が参加する部門の要項をご確認ください。



