空音開発Kuon R&D
録音技術 · 2026.02.05

バイノーラルを超えて。無指向性AB方式マイクの「立体的」な魔力と未来

今、世の中は「立体音響」や「ASMR」という言葉で溢れています。 ダミーヘッドを使ったバイノーラル録音こそが正解だ、という風潮さえあります。 しかし、あえて問いかけたい。 あなたが普段、音楽を聴くのは「ヘッドホン」だけで

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今、世の中は「立体音響」や「ASMR」という言葉で溢れています。

ダミーヘッドを使ったバイノーラル録音こそが正解だ、という風潮さえあります。

しかし、あえて問いかけたい。

あなたが普段、音楽を聴くのは「ヘッドホン」だけですか?

スピーカーで聴いたとき、部屋の空気が変わり、目の前に演奏家が現れるような体験。

それを実現できるのは、バイノーラルではありません。

100年前から変わらず、そしてこの先100年も変わらないであろう「録音の王道」。

それが、空音開発が提唱し続ける「無指向性AB方式」です。

なぜ、指向性ではなく「無指向性」なのか

世の中の多くのマイクは「単一指向性(カーディオイド)」です。

狙った音だけを拾い、周囲の雑音をカットする。
確かに便利です。

しかし、指向性マイクには物理的な宿命があります。

それは、「距離によって低音が痩せる(近接効果の逆)」ことと、「空間の広がりが不自然になる」ことです。

対して、私が愛する「無指向性(オムニ)」のマイクは、360度すべての音を平等に扱います。

「音」だけでなく、その場の「気圧」「湿度」「壁の反射」までも記録します。

だからこそ、再生した瞬間に「部屋ごと移動したような感覚」に陥るのです。

AB方式という「空間の切り取り方」

ステレオ録音には様々な手法があります。

マイクを交差させる「XY方式」、人間の頭を模した「バイノーラル方式」。

それぞれに良さはありますが、空音開発が「AB方式」を採用し続けるには明確な理由があります。

時間差こそが、立体感の正体である

AB方式とは、2本のマイクを左右に離して設置する、最もシンプルな手法です。

この「距離」が魔法を生みます。

右から来た音は、右のマイクに先に届き、遅れて左のマイクに届きます。

このわずかな「到達時間のズレ(位相差)」を脳が感知したとき、人は強烈な「広がり」と「実在感」を感じるのです。

XY方式ではこの「時間差」がほぼ無いため、音は定位しますが、広がりは狭くなります。

AB方式だけが、スピーカーの枠を超えて、壁の向こう側まで世界を拡張できるのです。

Future Insight: 100 Years Perspective

AIが絵を描き、文章を書く時代になりました。

いずれ、架空の完璧な音色もAIが作るようになるでしょう。

しかし、「その日、その場所、その瞬間に空気がどう震えたか」という事実は、計算では作れません。

100年前の技術者たちが、当時のホールの響きをレコードに刻んだように。

私たちもまた、マイクという物理的な耳を通して「時間」を保存しているのです。

物理法則が変わらない限り、この「2本のマイクで空間を切り取る」という手法は、
この先100年経っても、決して色褪せることのない「真実」であり続けます。

無指向性のセッティング・バリエーション

無指向性マイクの面白さは、セッティングの自由度にあります。

P-86S / X-86Sを手に入れたら、ぜひ以下の配置を試してみてください。

  1. スモール A-B(間隔 30cm〜50cm)

最も標準的で美しいバランス。
人間の頭の幅より少し広く取ることで、ヘッドホンでもスピーカーでも極上の立体感が得られます。
空音開発の推奨セッティングです。

  1. ワイド A-B(間隔 1m〜)

オーケストラやパイプオルガン、あるいは「森全体」を録るときに使います。
音像の真ん中は薄くなりますが、包み込まれるような壮大なスケール感が生まれます。

  1. デッカ・ツリー(Decca Tree)的アプローチ

1950年代にデッカ・レコードが開発した手法。
左右のマイクに加え、中央にもう一本追加します。
(※3本のマイクとマルチトラックレコーダーが必要です)。
映画音楽のような濃密な音が録れます。

  1. バウンダリー効果(床置き・壁貼り)

無指向性マイクを床や壁に直接貼り付ける手法です。
反射音の影響をキャンセルし、驚くほど低音が伸びた、芯のある音が録れます。
ピアノの床下や、ホールの壁面で威力を発揮します。

次の100年へ、音を残すために

流行りの機材は、数年で陳腐化します。

しかし、本質的な設計で作られた道具は、時代を超えて愛されます。

空音開発のマイクは、派手な機能も、専用アプリもありません。

あるのは、純度の高いカプセルと、余計なものを削ぎ落とした回路だけ。

それは、100年前から続く「録音」への敬意であり、100年後の未来へ「今の空気」を届けるための最適解です。

あなたが今日録るその音は、未来への遺産になります。

だからこそ、嘘のない、本物のマイクを使ってください。

空間を、永遠に保存する。

無指向性AB方式のために生まれた

その「真実の音」を手に入れる →

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