目次
はじめに
笙(しょう)という楽器は、その構造も音も独特で、特に「音名」と「運指」の把握が最初のハードルになります。
この記事では、笙の各管に割り振られた名称(音名・管名)と、どの指でどの管を押さえるのかという運指情報を、実際の演奏に使える形で完全に整理しました。
これから笙を始める方や、すでに練習しているけれど音の配置に不安がある方にとって、世界一わかりやすく体系化された資料になるよう意図して構成しています。
1. 笙の管と“音が出る15本”
笙には17本の竹管が取り付けられていますが、音が出るのはそのうち15本です。
残る2本(「也」「毛」)は飾り管で、リード(簧)が取り付けられておらず、音は出ません。
それぞれの竹管には、雅楽固有の管名(読み)があり、さらに西洋音楽的な観点で対応する音高(実音)も決まっています。
2. 笙の音名・管名・音高一覧表
以下の表は、笙の各管に割り振られた名前(管名)、読み、音の高さ(西洋音名)を対応させたものです。
これは演奏時の管配置に従い、吹き口から見て右回りの順に並べています。
■ 音名・管名・音高対応表
笙の各音に対応する運指(指の使い方)
笙の演奏では、15本の管を左右の手の指を使って1本ずつ押さえることが基本です(※例外あり)。
以下は、各音に対応する管と、主に使われる指(左右/指番号)を記載した表です。
- L:左手、R:右手
- 指番号:1=親指、2=人差し指、3=中指、4=薬指
■ 音高別・運指対応表
音名と指の対応(左右の手・指ごとの配置表)
押さえ方と演奏時の注意点 笙の音を“確実に美しく”鳴らすために
笙(しょう)の美しい和音は、正しい押さえ方と身体の使い方によってはじめて安定して響きます。
逆に言えば、どれほど正しい指を押さえていても、押さえ方が甘かったり姿勢が乱れていれば、音が鳴らなかったり、かすれたり、音程が不安定になったりすることも珍しくありません。
この章では、初心者が最初に身につけるべき「押さえ方」「姿勢」「注意点」を、段階的に解説します。
1. 笙の構え方(姿勢)
■ 基本姿勢
- 椅子に浅く腰掛けて背筋を伸ばす猫背にならないよう、背中を少し反らせるイメージで
- 膝は肩幅に開き、両腕は自然に下ろす手首を曲げすぎない
- 笙の風袋(かしら)は心臓の前あたりにくるように構える
■ 楽器の持ち方
- 両手で軽く包み込むように持つ握るのではなく「支える」イメージ
- 力を抜いて、指が自然に竹管に届くよう調整
💡 POINT: 姿勢の安定は音の安定に直結します。
特に肺の動きを妨げない座り方は重要です。
2. 指の押さえ方の基本
■ 押さえる深さと密閉性
- 指孔(ふきあな)をしっかり“密閉”することが最重要!
少しでも隙間があると、音は出ません - 爪の先や指先の側面ではなく、“指の腹”で押さえるとくに親指・人差し指は角度に注意
■ 押さえる力加減
- 必要最低限の力で、確実に密閉する強く押しすぎると音程が不安定になる
- 長時間押さえる際は力を抜いてキープ力みは指の疲労とミスにつながります
■ 指を外すとき
- ゆっくり静かに離す急に離すと「ポコッ」という雑音が出る 合竹の“移り”では残す指と離す指を意識的に切り分ける
3. 息の使い方と注意点
■ 吹いても吸っても同じ音が出る
- 笙はフリーリード楽器なので、吹いても吸っても発音可能です
- 基本は「吹く → 吸う」の交互呼吸で、音を持続させます
■ 息の強さとスピード
- 息は強すぎず、弱すぎず、一定に息が強すぎるとリードが不安定に鳴る 弱すぎるとリードが起動せず鳴らない
■ 呼吸のタイミング
- 合竹の“移り変わり”の合間にごく自然に呼吸を入れる
- 常に余裕をもって吸えるように音量・時間配分を意識する
練習のコツ
- 最初は1音ずつ、確実に出せるようになるまで繰り返す
- 録音して“鳴っていない音”を客観的に把握する
- 合竹の切り替え練習では、共通音を残す意識を持つ
- 息のコントロール(吹き/吸い)を分けて練習する
まとめ:静かな精度が、天に届く音を生む
笙は「押せば鳴る」楽器ではありません。
密閉の精度・姿勢の安定・息の静けさそれらが揃って初めて、あの浮遊感のある透明な和音が空間に現れます。
派手な動きはなくとも、1つ1つの操作には高度な集中力が求められます。
まさに、音と向き合う沈黙の技術。
「笙を吹く」という行為は、音を鳴らすだけではなく、呼吸と手の内にある“和”を育てる行為でもあるのです。
