目次

聞こえている音で、原因は決まります
ノイズという一つの音はありません。
鳴っている音を言葉にできれば、原因はほぼ決まります。
仕組みと条件は 音声のノイズ除去と音割れ修復について にまとめています。
音の名前が分からないときの、切り分け方
三つ試すだけで、原因がどちら側にあるかが決まります。
機材を買う前に、必ずこれをやってください。
- マイクのケーブルを抜きます。
それでも鳴っていれば、原因はマイクではありません。
録音機やパソコンの側です。 - 入力ゲインを下げます。
音が一緒に小さくなれば、増幅の段で起きています。
変わらなければ、後ろの段か外から入っています。 - ケーブルを手で軽く動かします。
音が変わったり途切れたりすれば、接触か断線です。
この三つで、原因は「マイク」「増幅」「接続」「外」の四つに絞れます。
ここから先は、絞れた側だけを見ます。
「インピーダンスが合っていない」と書かれた記事を読んで、そこで手が止まった方も多いと思います。
その言葉は、いったん忘れてかまいません。
ホワイトノイズは、確かめる順番さえ間違えなければ、道具を買い足さずに消せることが多い音です。
この記事では、原因を切り分ける順番を、私が現場で使っている通りに書きます。
確かめる順番を、先に決めておく
やみくもに設定を触ると、何が効いたのか分からなくなります。
順番はこうです。
- 入力ゲインのつまみが、どこまで回っているかを見る
- マイクケーブルの種類を見る
- USB の規格を合わせる
- 部屋の中で鳴っているものを止める
- ソフトの中で音に触っている処理を切る
上から順に試してください。
1 と 2 でほとんどが解決します。
ゲインのつまみが「3時」より右にありませんか
機材を触る前に、確かめてほしいことがあります。
オーディオインターフェイスやミキサーの入力ゲイン。
そのつまみは、いまどこを指していますか。
3時より右、あるいは最大の位置まで回っているなら、ノイズの原因はほぼそこです。
なぜ回すとノイズが出るのか
マイクが送り出す電気信号は、とても小さいものです。
その小さな信号を、機材の中のマイクプリアンプが増幅して使える大きさにします。
増幅するとき、信号と一緒に、回路そのものが持っている微かな電気の揺らぎも大きくなります。
これが「サー」の正体です。
つまみを大きく回すほど、この揺らぎも同じだけ大きくなります。
ダイナミックマイクを使っていませんか
ここが、最も多い行き止まりです。
ダイナミックマイクは、ドラムの打音や、至近距離の歌声のような大きな音を録るために作られています。
そのぶん感度が低く、普通の部屋での話し声を拾おうとすると、ゲインを目一杯まで回すことになります。
安価なマイクプリアンプを全開で使えば、回路の揺らぎが持ち上がります。
これは設定の失敗ではなく、組み合わせの問題です。
解決は「ゲインを上げなくてよいマイク」に替えること
感度の高いマイクに替えると、同じ音量を得るのにゲインを半分以下しか回さなくて済みます。
回さなければ、揺らぎも持ち上がりません。
ノイズは、うそのように減ります。
コンデンサーマイクが向いているのはこの点です。
私は市販のマイクをひと通り試したうえで、自分が使いたいマイクを自分で作りました。
必要な空気感は残し、電気の揺らぎを持ち込まない回路にしています。
プラグインパワーのレコーダーに挿すだけで使える P-86S と、ファンタム電源で使う X-86S の二種類があります。
ケーブルの先が「棒」になっていませんか
マイクをオーディオインターフェイスに繋いでいるケーブル。
その先端を見てください。
金属の棒が一本、途中に黒い輪が一本だけ入っているなら、それはアンバランスのケーブルです。
アンバランスのケーブルは、周囲の電波や電源のノイズをそのまま拾います。
マイクを繋ぐなら、XLR のバランスケーブルに替えてください。
バランスのケーブルは、途中で拾ったノイズを打ち消す仕組みを持っています。
これだけで消えることがあります。
ケーブルで音は変わります
安価なケーブルは、余計な加工がされていないぶん素直に鳴ります。
予備として何本か持っておくと、現場で困りません。
そのうえで、音質にこだわるなら MOGAMI 2549 を選んでください。
コネクタは NEUTRIK のものが使われている個体を選びます。
ケーブルによる音の違いは、聴き比べた音源つきで別の記事にまとめています。
USB の規格を合わせる
USB で直接つなぐマイクを使っている場合です。
マイク側が USB 2.0 のものを 3.0 のポートに挿していると、ノイズが出ることがあります。
パソコン側のポートがどの規格なのかも確かめてください。
規格を合わせるだけで消えることが、意外にあります。
部屋の中で鳴っているものを止める
マイクを替えてもまだ気になるなら、音源は機材の中ではなく部屋の中です。
デスクトップのパソコンは、水冷でない限りファンが回り続けています。
冷蔵庫は、古い個体ほど鳴ります。
近くにあると、はっきり乗ってきます。
エアコンも同じです。
一度、止められるものを全部止めて録ってみてください。
ホールやスタジオでは、遠慮せずに頼んでよい
現場では、録音の間だけ空調を止めてもらうことがあります。
何度も入り切りをお願いすることも、珍しくありません。
音を整えることと、演奏者が快適に過ごすことを両立させるための、当たり前の相談です。
ここで嫌な顔をされる場所は、別のところでも問題が起きることがあります。
パソコンから離れて録る
パソコンのファンから逃げる方法もあります。
ファンのないレコーダーを使えば、そもそも回っているものがありません。
用途別のレコーダーの選び方は、別の記事にまとめています。
ソフトの中で、音に触っている処理を切る
配信ソフトの「ノイズ抑制」を入れているのに、かえって「サー」が目立つことがあります。
順番の問題です。
ノイズ抑制より前にコンプレッサーが入っていると、コンプレッサーが小さな音を持ち上げます。
そのとき、ノイズも一緒に持ち上がります。
DAW でも同じことが起きます。
テンプレートから開いたプロジェクトには、最初からイコライザーやコンプレッサーが挿さっていることがあります。
低域や中域が大きく持ち上がる設定になっていれば、そこにノイズも乗ります。
いったん全部切って、素の音を聴いてください。
適切に録れていれば、処理は要りません
マイクの選び方と立て方が合っていれば、声の収録でコンプレッサーやイコライザーが必要になることはほとんどありません。
ソフト側を切って直ったなら、配信ソフトの中の処理も同じように切ってください。
ブーンと低く唸るとき(ハムノイズ)
サーではなく、低く唸る音が乗っているときは、電源が原因です。
日本の電源は東側で毎秒 50 回、西側で毎秒 60 回振れています。
その振れが音の信号に混ざると、低い唸りとして聞こえます。
確かめ方と直し方は次のとおりです。
- 録音機とパソコンを、同じ電源の口から取ります。
別々の壁から取ると、二つの機器の間に電位の差が生まれ、その差がケーブルを通って音に乗ります - ノートパソコンなら、電源を抜いて電池だけで動かしてみます。
これで消えれば原因は電源側です - マイクのケーブルを、電源のケーブルと並べて這わせないようにします。
交差させるなら直角にします - それでも残るなら、接続をバランス型(XLR)に替えます。
バランス接続は、途中で乗った雑音を打ち消す仕組みを持っています
ジーと高く鳴るとき(電磁ノイズ)
細く高い音が乗るときは、近くの機器から出ている電波や電磁波を拾っています。
携帯電話をマイクやケーブルから離してください。
通信が始まる瞬間に音が変わるなら、これが原因です。
無線の親機、パソコンの画面、USB で動く外付けの機器も同じことを起こします。
アンバランス接続(3.5mm のプラグなど)は、この種類の雑音を拾いやすい構造です。
バランス接続に替えられるなら、それがいちばん確実です。
プツプツと途切れるとき(取りこぼし)
これは雑音ではなく、音が抜け落ちている状態です。
パソコンが処理に追いつかず、音のかけらを落としています。
- 録音ソフトのバッファ(緩衝の大きさ)を大きくします。
遅れは増えますが、落ちなくなります - USB の口を替えます。
他の機器と同じ口を分け合っていると足りなくなります - 裏で動いているものを止めます。
同期、更新、ブラウザの多数のタブ
番外 マイクを挿す場所は合っていますか
相談を受けた中に、モノラルで録るのに右の入力へ挿していた方がいました。
チャンネルの多い機材が安く手に入るようになったぶん、起こりやすくなっています。
複数の入力がある機材では、左から順に埋めていってください。
これを習慣にしておくと、後から見返したときに迷いません。
どうしても残った雑音を、録ったあとに下げる
ここまでの手順で原因の大半は消えます。
それでも残る量は、機材が構造として出している分です。
これは録音の時点では下げられません。
録ったあとに処理します。
空音開発の KUON RESTORE は、ブラウザだけで動きます。
何も入れずに、録音ファイルを渡すと雑音の成分を見つけて下げます。
無音の部分を手本にする方式なので、声の成分を削りすぎません。
電源由来の唸りを取る処理と、振り切れた波形を戻す処理も同じ場所にあります。
ただし順番を間違えないでください。
録音の時点で減らせるものを、あとの処理で片づけようとすると音が痩せます。
上の手順を先に通してから使ってください。
この記事は、空音開発がステレオマイク P-86S と X-86S を設計して製造している立場から書いています。
研究者識別子 ORCID は 0009-0002-2530-4142、測定した公開データの永続識別子は DOI 10.5281/zenodo.22064426 と 10.5281/zenodo.22076507 です。
記載は 2026 年 9 月 16 日に確認しました。

