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同じ白鍵の並びから生まれているのに、呼び方も説明の順序もまるで違う。
音大生はイドフリミエロと覚えてませんでしたか?
ちょっと古いかも?
さて今日はそんなイドフリミエロなおはなし。
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7つの旋法とは、どのような音の並びか
ピアノの白鍵だけを使い、開始音を変えるだけで7つの異なる音階が生まれます。
Cから始めるとイオニアン(長音階)、Dから始めるとドリアン、Eから始めるとフリジアン。
黒鍵は一切使っていません。
構成音は次のとおりです。
隣り合う音の間隔は、旋法ごとに異なります。
たとえばイオニアンは「全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音」、ドリアンは「全音、半音、全音、全音、全音、半音、全音」です。
半音の現れる位置が変わることで、同じ白鍵の集合から性格の異なる7つの音階が立ち上がります。
クラシックの理論ではどう説明されるか

クラシックの理論では、旋法を「調」という上位の枠組みから説明します。
イオニアンは長音階そのもの、エオリアンは自然短音階です。
それ以外の5つは、長音階または短音階の一部を半音変化させた派生形として位置づけられます。
ドリアンは「短音階の第6音を半音上げたもの」、ミクソリディアンは「長音階の第7音を半音下げたもの」、リディアンは「長音階の第4音を半音上げたもの」、フリジアンは「短音階の第2音を半音下げたもの」、ロクリアンは「短音階の第2音と第5音を半音下げたもの」です。
長調と短調という2つの柱から、そこをどう外れたかで残りの旋法を理解します。
この見方は、中世の教会旋法が機能和声の確立とともに長調と短調の二つに収斂していった歴史を映しています。
ジャズの理論ではどう説明されるか

ジャズの理論では順序が逆です。
まず目の前に一つの和音があり、その上でどんな音階が使えるかを考えます。
たとえばDm7というコードには、ルートのDから白鍵だけで並べたドリアンが自然に適合します。
コードと音階がセットで扱われるため、旋法名は和音の種類と直結します。
イオニアンはメジャーセブンス系、ドリアンはマイナーセブンス系、フリジアンはサスフォー系、リディアンはメジャーセブンスのシャープイレブン系、ミクソリディアンはドミナントセブンス系、エオリアンはマイナーセブンス系、ロクリアンはハーフディミニッシュ系です。
コードネームを見て即座に使える音階を選ぶ道具として、モードが機能します。
この対応関係は、ジャズの即興演奏において、コードが変わるたびに演奏者が瞬時に音階を切り替えるための実用的な枠組みです。
なぜ同じ音なのに名前と説明が違うのか
ここに、同じ7つの音の並びに異なる名前と説明が生まれた核心があります。
クラシックは「調」という上位の枠組みから降りてきて、個々の旋法を長調や短調からの変形として位置づけます。
ジャズは「目の前の和音」という具体的な音から出発して、その上で使える音階として旋法を積み上げます。
視点の方向が正反対なのです。
たとえばドリアンという同じ音階を、クラシックの人は「ニ短調の第6音を半音上げたもの」と説明し、ジャズの人は「Dm7の上で使える音階」と説明します。
同じものを指しているのに説明の向きが天地ほど違うのは、このためです。
クラシックの人は楽譜の調号を見て音楽の骨格を先に掴み、ジャズの人はリードシートのコードネームを見て瞬間ごとの響きを先に掴む。
この習慣の違いが、旋法の説明のされ方にそのまま現れています。
一方は構造から響きへ降りていき、他方は響きから構造へ登っていく。
どちらが正しいという話ではなく、出発点が違うだけです。
それぞれの立場から何が使えるか
クラシック的な視点。
モードを和音進行の選択肢として捉えてみてください。
エオリアンで書かれたパッセージをドリアンに変えると、第6音が半音上がり響きが開けます。
これは和声法の「下属調への借用」を音階単位で捉え直したものと考えれば、馴染みやすいでしょう。
ジャズ的な視点。
旋法をコードから切り離し、横の流れとして捉えてみてください。
ミクソリディアンの第7音が半音下がっているのは、属七の和音に適合するからだけでなく、導音(第7音から主音への半音上行)を外すことで解決への緊張を和らげる、横の機能でもあります。
コードスケールを超えた旋律の方向性としてモードを見る視点です。
最後に考えてみてください。
普段使っている短調のフレーズをドリアンに、長調のフレーズをミクソリディアンに置き換えると、曲の性格はどう変わるでしょうか。
半音ひとつ分の違いが全体の印象をどう動かすか。
白鍵の上で開始音をひとつずらすだけで広がる7つの世界を、あなたの手でたどってみてください。
