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楽典と音楽 · 2026.08.03

ドミナントセブンス 解決|V7 と G7、次に進む先の決め方

V7とG7は同じ四和音です。しかしクラシックは調の機能から、ジャズは響きの構成から名前を付けます。二つの名前の由来と、それぞれの見方を身につける手がかりを解説します。

目次

クラシックをやってきた人がジャズのコード譜を見ると「G7ってV7のこと?」と戸惑い、ジャズをやってきた人がクラシックの和声分析を見ると「V7って要するにG7でしょ?」と思ってしまう。

どちらも正しい。

同じ四和音なのに名前が違うのは、音への近づき方が逆だからです。

この和音は、音として何なのか

音の事実から始めましょう。

ここで扱う和音は、根音から順に長3度、完全5度、短7度を積んだ四和音です。

根音をGにすると、構成音は G、B、D、F になります。

根音からの音程役割
G完全1度根音
B長3度第3音
D完全5度第5音
F短7度第7音

この和音の駆動力は、BとFの間に生じる三全音(減5度、半音6つ分の隔たり)にあります。

不協和なこの音程が、より協和な音程へ動こうとする。

Bは半音上へCへ、Fは半音下へEへ。

この二つの動きが、和音全体をハ長調の主和音(C-E-G)へ導きます。

これが「解決」の正体です。

クラシックではなぜV7と呼ぶのか

クラシックの和声学では、この和音を「属七の和音」、記号で「V7」と呼びます。

名前の由来は、調の中での役割です。

ハ長調を例にとります。

音階は C、D、E、F、G、A、B の7音。

5番目の音Gを属音と言い、Gの上に音階の音を一つ飛ばしで積むと G-B-D-F になります。

これが属七の和音です。

クラシックでは、まず調があります。

その調の中で、V(属和音)の位置に積まれた7の和音だからV7。

調の枠組みが先で、個々の音は後から決まります。

この考え方では、G7と書かれた和音を見ても「これは何調のV7か」と問うことから始まります。

V7の本質は機能です。

主和音(I)へ進もうとする引力を持ち、このV7→Iの動きをドミナントモーションと呼びます。

第7音Fが半音下のEへ、導音Bが半音上のCへと進む声部の動きが、解決の実体です。

ジャズではなぜG7と呼ぶのか

ジャズでは、同じ和音を「G7」と呼びます。

コードネームの考え方は、根音をアルファベットで示し、その上に積まれた音の種類を数字と記号で表すというものです。

Gという根音に、7(短7度を含む四和音を意味する記号)を添えてG7。

目の前にある音を積み上げて名前を作ります。

調の情報はコードネームに含まれません。

G7はハ長調のV7でもありえますが、他の調でも同じ名前で使われます。

ジャズでは、G7という響きそのものが独立した存在です。

ドミナントモーションは、調の機能ではなく、コード同士の関係として理解されます。

BがCへ、FがEへという動きはクラシックと同じですが、それは「G7からCへ動くときの声部進行」であり、「V7からIへの機能解決」とは捉え方が異なります。

G7の上では、構成音をすべて含むGミクソリディアンが自然に響きます。

なぜ同じ和音に二つの名前が生まれたのか

ここまで見てきたように、クラシックとジャズでは音に名前を付ける順序が逆です。

これが、同じ和音に二つの名前が生まれた根本的な理由です。

クラシックの手順は、上位の枠組みから降りてきます。

まず調があり、音階の各音に主音・属音・下属音といった機能名が与えられ、その上に積まれた和音がI、IV、Vと番号付けされる。

Vの位置で、音階の音をさらに積んで7度まで達したものがV7です。

名前の出発点は常に調。

言い換えれば、V7という名前は「この和音が何をするか」を表しています。

ジャズの手順は、目の前の音から上がっていきます。

まず鳴っている音を聴き、一番下の音を根音と認識し、そこから各音までの音程を調べて、和音の種類を決める。

Gが根音で、長3度と完全5度と短7度だからG7。

名前の出発点は常に個々の音です。

G7という名前は「この和音が何でできているか」を表しています。

同じG-B-D-Fという音の集まりにたどり着くのに、一方は「ハ長調の5番目の音の上に積まれた7の和音」という経路でV7に至り、もう一方は「Gを根音とする短7度を含む四和音」という経路でG7に至る。

道順が正反対なのです。

これは派閥や流派の違いではなく、音楽をどう組み立てるかという前提の違いに由来します。

しかし、どちらの立場でも、和音が次の和音へ動く仕組みは同じです。

三全音B-Fの不協和が、より安定したC-Eへ解決する。

この音響的な事実は、調性音楽にもジャズにも変わりなく働きます。

相手の見方をどう身につけるか

クラシックからジャズへ。

コードネームを読むときは、まず根音のアルファベットを見ます。

G7ならG、Bb7ならB♭。

次に数字と記号を確認します。

7だけなら属七(長3度+短7度)、m7なら短七(短3度+短7度)、maj7なら長七(長3度+長7度)。

この読み方は、[コードネーム 読み方。

Cm7b5を左から順に読めば解ける手順](https://kuon-rnd.com/journal/chord-symbol-how-to-read)に詳しく書いています。

いったん根音と構成がわかれば、それがどの調のV7なのかも逆算できます。

ジャズからクラシックへ。

V7を見たら、まず調号から主音を確認します。

シャープ一つならト長調かホ短調。

調性が確定したら、主音から5度上の音を見つけてください。

それがV7の根音です。

この調と機能の関係は、[五度圏 覚え方。

調号の増え方と関係調がひと目でわかる円の仕組み](https://kuon-rnd.com/journal/circle-of-fifths-key-signatures)で体系的に整理されています。

V7がIへ解決するという機能和声の考え方は、コード進行の「なぜここでこの和音なのか」を説明してくれます。

この問いはジャズのコード譜だけでは見えにくいものです。

あなたが今演奏している曲のなかに、V7ともG7とも読める和音が必ずあります。

それを一つ取り出して、クラシックの目(この和音はどこへ行きたがっているか)とジャズの目(この和音の上でどんな音階が響くか)の両方で眺めてみてください。

どちらの見方が、あなたの演奏をより豊かにしますか。

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