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録音技術 · 2026.08.03

ORTF方式 とは 間隔17cm 開き角110度

ORTF方式はフランス国営放送が定めたステレオマイク配置で、単一指向性マイク2本を間隔17cm、開き角110度にセットします。時間差と強度差の両方を使い、明確な定位と良好なモノ互換性を両立する仕組みを解説します。

目次

ORTF方式は、フランス国営放送が定めたステレオマイク配置です。

単一指向性マイク2本を間隔17cm、開き角110度でセットします。

なぜこの数値なのか、仕組みから整理していきましょう。

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ORTF方式とは

ORTFは Office de Radiodiffusion-Television Francaise(フランス国営放送)の略で、1960年代に同局が定めた方式です。

2本の単一指向性マイクを間隔17cm、開き角110度で配置します。

録音方式はマイク間の距離で3つに分けられます。

同軸方式(コインシデント)は強度差だけで定位を作り、間隔方式(スペースド)は時間差を主な手がかりとします。

ORTFはこの中間の準同軸方式(ニアコインシデント)で、時間差と強度差の両方を使う点が特徴です。

ORTF方式の主要パラメータ
項目備考
分類準同軸(ニアコインシデント)時間差と強度差の両方を使う
マイクの指向性単一指向性カーディオイド2本
マイク間隔17 cm人間の両耳の間隔に近い設定
開き角110 度正面から外側へ左右に振る

他の準同軸方式との比較です。

主な準同軸方式の比較
方式間隔開き角指向性特徴
ORTF17 cm110 度単一指向性定位が明確、モノ互換性も比較的良い
NOS30 cm90 度単一指向性ORTFより広がりが大きい
DIN20 cm90 度単一指向性ORTFとNOSの中間的な性格

なぜ間隔17cm、開き角110度なのか

ORTFの数値は、人間の方向知覚を2本のマイクで再現した結果です。

間隔17cmが意味すること

人の両耳の間隔は約17cmです。

左右の耳に音が到達する時間差(両耳間時間差、ITD)は方向知覚の重要な手がかりです。

ORTFの17cmはこの耳の間隔を模しています。

ただし、17cmが時間差として有効に働く帯域には限りがあります。

空気中の音速を約343m/s(摂氏20度)とすると、波長は周波数によって大きく変わります。

周波数と波長の関係(音速約343m/sの場合)
周波数波長17cm間隔との関係
100 Hz約3.4 m波長が長く、位相差がほとんど生じない
1000 Hz約0.34 m17cmは約半波長、明確な位相差が生じる
10000 Hz約0.034 m17cmが複数波長分になり、位相があいまいになる

100Hzのような低域では、波長(約3.4m)に対して17cmはごくわずかで、時間差による定位の手がかりは弱くなります。

この帯域では主に強度差が方向感を支えます。

1000Hz前後の中域では17cmが約半波長にあたり、時間差が明確な定位情報となります。

10000Hzを超える高域では波長が短くなりすぎ、再び強度差に頼ります。

ORTFは帯域によって時間差と強度差が切り替わる仕組みです。

開き角110度が意味すること

単一指向性マイクは正面で感度が最大になり、角度がつくほど感度が下がります。

2本を110度外側へ開くことで、左右の音源に対して近い側が強く、遠い側が弱く反応します。

この強度差(両耳間強度差、ILD)が方向感を作ります。

110度は正面の音源を両方のマイクが適度な角度から拾える値です。

狭すぎると広がりが不足し、広すぎると正面の音源がどちらのマイクに対しても軸から外れて中央の定位が弱くなります。

時間差と強度差の組み合わせ

ORTFの本質は時間差と強度差の2つを併用することです。

XY方式は強度差だけを頼るため広がりは控えめですが、モノ互換性に優れます。

AB方式は時間差を主な手がかりとするため広がりは豊かですが、間隔が広いとモノラル再生時に中央が薄くなることがあります。

ORTFはこの中間で、位相干渉(コムフィルタ効果)が抑えられ、XY方式より自然な広がりが得られます。

実際にどう選び、どう使うか

ORTFが向くのは、定位の明確さとモノ互換性のバランスが求められる場面です。

ただし会場と編成と目的で最適な方式は変わるため、以下は判断の枠組みとして捉えてください。

他の方式との選び分け

会場の響きが豊かで空間の広がりを重視するなら、無指向性のAB方式が向くことがあります。

ワンポイント録音の全体像は「ワンポイント録音とは?
1組のマイクだけで全体を収める方法と原理
」で扱っています。

響きが乏しい部屋やモノラル再生前提の収録ではXY方式が適します。

XY方式は時間差がほぼ生じないため、モノラルにしても位相干渉が起きません。

ORTFは、適度な広がりが欲しく、かつモノラル再生の可能性が残る場合の選択肢です。

NOS方式(間隔30cm、開き角90度)と迷ったときは、広がりを求めるならNOS、定位の正確さを優先するならORTFが目安になります。

指向性の選び方については「無指向性と単一指向性の使い分け 録音で何が変わるのか」も参照してください。

セッティングの考え方

ORTFの数値はマイク同士の幾何学的な関係を定めたもので、音源からの距離を規定するものではありません。

距離は会場の残響、編成の大きさ、求める直接音と残響音の比率で変わります。

判断の手がかりは臨界距離です。

直接音と残響音のレベルが等しくなる距離で、これより近づけば直接音が優勢に、離れれば残響音が優勢になります。

臨界距離は部屋の残響と音源の指向性で変わるため、実際に音を出して位置を探ることが欠かせません。

誤解しやすい点

ORTFは録音の「正解」ではありません。

間隔17cm、開き角110度はフランス国営放送が自社の環境で良い結果を得た設定であり、あらゆる場面で最適とは限りません。

3対1の法則との混同にも注意が必要です。

3対1の法則は「マイク間の距離を、マイクから音源までの距離の3倍以上にする」という目安で、複数の音源を別々のマイクで拾うマルチマイク録音で使われます。

ORTFの2本は「一組のステレオマイク」であり、分離して距離を計算する対象ではありません。

近接効果についても知っておいてください。

単一指向性マイクには近接効果があり、音源に近づけると低域が持ち上がります。

ORTFはある程度の距離をとって全体を収める使い方が前提であり、至近距離では低域のバランスが変わります。

あなたの演奏を録るとき、会場の響きはどのくらい残っていますか。

その響きを活かしたいのか、それとも抑えたいのか。

まずそこから考えてみると、ORTFが適切かどうかの判断がつきやすくなります。

Kuonでは無指向性のAB方式を研究しており、独自のマイクも開発しています。

ぜひ試聴してみませんか?

音質があなたの耳に合えば数十万円の機材予算が浮くかもしれませんよ。

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