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録音技術 · 2026.09.05

3対1の法則 マイク|干渉を抑えるマイク間の距離の決め方

2本のマイクを別々の音源に向けるとき、マイク間の距離を音源までの距離の3倍以上に離す3対1の法則。なぜ3倍なのか、距離をどう決めるのかを、逆二乗の法則とコムフィルタから説明します。

目次

2本のマイクを別々の音源に向けて同時に録ると、互いの音が漏れて混ざります。

この干渉を目立たなくする目安が、マイク間の距離を音源までの距離の3倍以上に離す3対1の法則です。

なぜ3倍なのか、距離をどう決めるのかを答えます。

3対1の法則とは

3対1の法則とは、2本のマイクを同時に使い、それぞれが別々の音源に向いている場面で、マイク同士の距離を、それぞれのマイクから自分の音源までの距離の3倍以上に離す、という目安です。

名前の「3対1」は、マイク間の距離と、マイクから音源までの距離の比を指します。

ポイントは、長さそのものではなく、距離の比だけを決めている点です。

音源に近いマイクなら間隔も近く、音源から遠いマイクなら間隔も広く取る、というふうに、基準は音源との距離にあります。

3対1の法則の要点
項目内容
使うマイク2本
マイク間の距離マイクから音源までの距離の3倍以上
狙い漏れのレベルを下げ、干渉を目立たなくする
位置づけ目安であり、絶対の規則ではない

なぜ3倍なのか

2本のマイクが別々の音源に向いていると、1本のマイクには、自分が向いている音源の音(直接音)と、もう一方の音源から漏れて届く音(漏れ)の両方が入ります。

問題はこの漏れです。

漏れは直接音より長い経路をたどるため、直接音とわずかな時間差をもって重なります。

同じ音が時間差をもって2つの経路から届くと、コムフィルタと呼ばれる現象が起きます。

特定の周波数で音が打ち消しあい、周波数特性が櫛の歯のように凸凹になる現象です。

録り上がりは、特定の音域が凹んだ、色づいた音になります。

打ち消しの深さは、2つの音のレベルの差で決まります。

漏れが直接音と同じくらいのレベルだと、打ち消しが深くなり、濁りとして耳につきます。

漏れが直接音より十分に小さければ、打ち消しは浅くなり、ほとんど気になりません。

そこで漏れを下げるのが、3対1の狙いです。

音は距離が離れるほど弱くなります。

逆二乗の法則では、自由音場(反射のない空間)で距離が2倍になると、レベルが約6 dB下がります。

3対1でマイク同士を離すと、他方の音源から漏れてくる音は、自分の音源から直接届く音より、経路が2倍以上長くなります。

そのぶん漏れのレベルが下がり、干渉による周波数特性の乱れが目立たなくなる、という理屈です。

漏れの量は、マイクの指向性(音を拾う方向によって感度が変わる性質)でも変わります。

単一指向性のマイクは、正面の感度が高く、真後ろの感度が最も低いため、後ろから届く漏れを抑えられます。

無指向性のマイクは全方向から等しく拾うため、漏れも素直に入ります。

距離で下げるぶんに、指向性による抑えを重ねられます。

指向性と拾う方向
指向性拾う方向
無指向性全方向から等しく拾う
単一指向性正面が高く、真後ろが最も低い
超指向性正面が鋭く、真後ろにわずかな感度が残る
双指向性正面と背面を拾い、側面が最も低い

実際にどう使うか

まず、自分のマイクから音源までの距離を測り、その3倍をマイク間の間隔の目安にします。

ここまでは単純です。

難しいのは、3倍で足りるかどうかの判断です。

足りるかどうかは、漏れが実際にどれだけ耳につくかで決まり、それは音源の指向性、部屋の響き、マイクの指向性で変わります。

全方向に音を出す音源は、漏れを多く生みます。

響きの多い部屋では、反射音が漏れのレベル差を埋めるため、逆二乗の法則どおりには下がりません。

無指向性のマイクは漏れを素直に拾うため、単一指向性より広い間隔が要ります。

逆に、音源が特定の方向にしか音を出さず、部屋の響きが少なく、単一指向性のマイクを使うなら、3倍より狭くても目立たないことがあります。

2つの音源をそれぞれのマイクで拾う配置を、実際の編成に当てはめた例は、ピアノ連弾 録音 方法 マイク 配置 2台ピアノ 収録で扱っています。

つまり3倍は出発点です。

そこから実際に録って聞き、必要なら広げ、問題がなければそのままにする。

測って終わりではなく、聞いて調整するのが本来の使い方です。

誤解しやすい点

3対1は規則ではありません。

目安です。

3倍以上離せば干渉が消えるわけでも、3倍未満なら問題になるわけでもありません。

コムフィルタは、レベル差が小さいほど目立つという連続的な関係であり、明確な境界線は引けません。

また、3対1は2本のマイクがそれぞれ別の音源に向いている場面の話です。

1つの音源を2本のマイクで拾うステレオ録音は、2本が同じ音を拾うことが前提で、この目安の対象ではありません。

その代表が [XY方式 マイク とは。

2本のカプセルを近づけて交差させる同軸ステレオ録音](https://kuon-rnd.com/journal/recording-technique-xy) です。

逆二乗の法則も、自由音場を前提にした理想の話です。

実際の部屋では反射があるため、距離を広げても約6 dBずつきれいに下がるとは限りません。

部屋の響きが支配的になる距離を超えると、離してもほとんど下がらなくなります。

3対1は距離だけの目安で、レベルや指向性まで決めるものではありません。

漏れが気になるときは、距離を広げる以外にも、マイクの向きや指向性を変えるという手があります。

最後に

最後に問いを一つ置きます。

あなたが次に録る音源は、どの方向に音を出していますか。

全方向に音を出す音源ほど漏れが増えるので、3倍という出発点からさらに間隔を広げる必要が出てきます。

逆に、音が一方向にだけ出る音源なら、3倍より狭くても十分かもしれません。

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