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サブウーファーは、低音を足すための装置だと説明されます。
それは正しいのですが、車の場合、話はもう少し込み入っています。
車室という空間そのものが、すでに低音を持ち上げているからです。
この前提を知っていると、選び方も置き方も変わります。
波長が、部屋より長くなる
音には長さがあります。
周波数が低いほど、一つの波が長くなります。
40ヘルツの音の波長は、およそ 8.5 メートルです。
80ヘルツで 4.3 メートル。
100ヘルツで 3.4 メートルほどになります。
一方、車の中の長さは、荷室まで含めてもおおよそ 3 メートルから 4 メートルです。
つまり、ある周波数から下では、音の波が部屋よりも長くなります。
この境目は車の大きさによりますが、おおむね 70ヘルツから 90ヘルツのあたりだと言われます。
部屋より長い波は、部屋を押します
波が部屋に収まらなくなると、音は「空間を伝わる波」としてではなく、「空間全体の圧力の変化」として働きます。
空気入れのポンプを押したときのように、密閉された箱の中の圧力が上下する。
それが耳に低音として届きます。
この状態になると、周波数が下がるほど出力が増えていきます。
増え方は 1 オクターブごとにおよそ 12デシベルと言われます。
かなりの量です。
この現象は、車室利得と呼ばれます。
車という小さな密閉に近い空間が、低音を無料で持ち上げてくれる、という話です。
そして小さい車ほど、この効きが強くなります。
部屋が小さいほど、波が収まらなくなる周波数が高くなるからです。
では、なぜサブウーファーが要るのか
車室が持ち上げてくれるなら、ドアのスピーカーだけで足りそうに思えます。
実際には足りません。
理由は二つあります。
一つは、ドアのスピーカーが下まで出せないことです。
持ち上がるのは、そこに音がある場合の話です。
もともと 60ヘルツ以下がほとんど出ていないスピーカーを持ち上げても、無いものは増えません。
ドアという箱の事情については 車種専用のカースピーカーは、何が違うのか に書きました。
もう一つは、無理に出させると壊れることです。
小さな振動板に低い音を出させようとすると、動く幅が足りずに歪みます。
歪んだ音は中くらいの帯域まで濁らせます。
低いところを別の担当に渡してしまえば、ドアのスピーカーは得意な範囲に集中できます。
つまりサブウーファーの本当の役目は、低音を増やすことよりも、ドアのスピーカーから低音の負担を取り除くことにあります。
結果として、中くらいの帯域が澄みます。
低音を足したのに、声がはっきりした、という体験が起きるのはこのためです。
シート下のものでも効くのはなぜか
座席の下に収まる薄い箱の製品があります。
高さ 7 センチほどのものが多く、車内の空間を圧迫しません。
見た目からすると力不足に思えますが、実際には効きます。
車室利得が助けてくれるからです。
家庭で同じ箱を置いても、こうはなりません。
持ち上げる部屋がないからです。
だから、まず試すならこの形が理にかなっています。
荷室を占領する大きな箱に進むのは、これで足りないと分かってからで遅くありません。
置き場所は自由ではありません
「低い音は方向が分からないから、どこに置いてもよい」という言い方があります。
これは半分だけ正しい話です。
たしかに 80ヘルツを下回るあたりから、人は音の方向を判断しにくくなります。
しかし実際には、置いた場所が分かってしまうことがよくあります。
理由は三つあります。
まず、担当させる範囲が上に広がりすぎているとき。
100ヘルツを超えるあたりまで受け持たせると、そこには方向の手がかりが残っています。
後ろから鳴っていることが分かります。
次に、歪みです。
無理をさせると、本来の音より高い成分が一緒に出てきます。
それが場所を教えます。
そして、振動です。
座席の下に置けば、腰から下に振動が伝わります。
耳が方向を判断していなくても、体が場所を知っています。
現場で目標とされているのは「低音が前から聞こえること」です。
歌い手と楽器が前にいるのに、低音だけ後ろから来る状態は、聴いていて落ち着きません。
つなぎ目の決め方
サブウーファーに何ヘルツから下を渡すかは、多くの機器で 40ヘルツから 200ヘルツの間で選べます。
決め方の順番はこうです。
まず、いま付いているドアのスピーカーが、実際にどこまで出ているかを測ります。
カタログの数字ではなく、その車のドアに付いた状態での実力です。
次に、その少し上に切れ目を置きます。
ドアが 80ヘルツから力を失っているなら、80ヘルツあたりで渡す。
ここが基本です。
高く設定しすぎると、後ろから低音が来ていることが分かります。
低く設定しすぎると、二つの担当のあいだに谷ができます。
測ってから決めれば、この二つの失敗を避けられます。
そして、つなぎ目では位相を確かめてください。
二つのスピーカーが同じ帯域を出しているとき、押す向きが逆だと打ち消し合います。
多くの製品に位相を反転させる切り替えが付いています。
切り替えて、低音が大きく聞こえるほうを選んでください。
それが合っているほうです。
よくある質問
まとめ
車室は、およそ 70ヘルツから 90ヘルツより下の帯域を、1 オクターブあたり 12デシベルほど持ち上げます。
だから車では小さな密閉の箱が理にかない、座席の下に入る薄い製品でも効きます。
サブウーファーの役目は、低音を増やすことよりも、ドアのスピーカーから低音の負担を取り除くことです。
だから中くらいの帯域が澄みます。
置き場所は自由ではありません。
渡す範囲を狭く保ち、位相を合わせ、量を控えめにする。
この三つで、低音が前から聞こえるようになります。
測り方の手順は カーオーディオの音質を、測って確かめる に、つなぎ目を調整する機器の話は 純正のナビを外さずに、音を変える にあります。



