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ダミーヘッドマイクは、人の頭を模した模型の、左右の耳の位置にマイクを埋め込んだ録音機材です。
ヘッドホンで再生したとき、音が耳のすぐ横や後ろから聞こえるのは、この構造から来ています。
値段を調べて驚いた方が多いはずなので、何にその金額がかかっているのかと、代わりになる方法を並べます。
何を記録している機材なのか
人が音の方向を判断するとき、手がかりは三つあります。
左右の耳への到達時間の差、音量の差、そして頭と耳たぶによって変わる音色です。
三つ目が厄介です。
頭は音をさえぎり、耳たぶは前から来た音と後ろから来た音とで違う色を付けます。
この変化があるから、人は前後を区別できます。
ふつうのマイクを二本並べても、この変化は記録されません。
ダミーヘッドマイクは、頭と耳たぶそのものを作ることで、この三つ目を機材の側で再現します。
録音の段階で人の頭を通した音になっているので、聴き手はヘッドホンで自分の耳に直接届けるだけで、その場に居たのと近い聞こえ方になります。
この考え方が実際に成立するのかは、1969 年に検証されています。
詳しくはダミーヘッド録音は正しい音の定位を再現できるかにまとめました。
値段が高い三つの理由
一つ目は、模型の精度です。
頭の大きさ、耳たぶの形、外耳道の深さが変わると、音色の付き方が変わります。
人の平均に合わせて型を作り、その通りに再現する必要があります。
二つ目は、左右のマイクをそろえる手間です。
左右で感度や周波数の癖がずれていると、音像が片側に寄ります。
この方式は左右差そのものを記録する機材なので、部品の選別が効いてきます。
三つ目は、生産数です。
買うのは放送局、研究機関、それに一部の制作者だけです。
量産の効かない機材の値段は、そのまま製作の手間になります。
買う前に確かめておくこと
ダミーヘッドの録音は、ヘッドホンで聴くことを前提にしています。
スピーカーで再生すると、左右の音が両耳に混ざって届くため、狙った音像は崩れます。
作品を配信する場合、聴き手がイヤホンで聴くかスピーカーで聴くかは選べません。
どちらで再生されても成立させたいなら、方式そのものを変える必要があります。
判断の材料はASMRのマイクの選び方に段ごとに並べました。
もう一つ、大きさと置き場所の問題があります。
人の頭と同じ体積があるので、机の上に据えたままになります。
持ち歩いて外の音を録る用途には向きません。
代わりになる三つの方法
耳の形だけを取り出した耳型のマイクは、頭部の回り込みを捨てるかわりに、耳たぶによる音色は残します。
据え置きで使う点はダミーヘッドと同じです。
イヤホンの形をしたマイクを自分の耳に着ける方法は、模型の代わりに自分の頭を使います。
頭の形は完全に再現され、持ち運びもできます。
実機はバイノーラル録音用イヤホン型マイク radius RM-ATZ19 のレビューで扱っています。
三つ目が、頭部の再現をやめて、二本の無指向性マイク(前後左右のどこから来た音も同じように拾うマイク)を耳の間隔ほど離して置く AB 方式です。
頭の影は記録されませんが、到達時間の差は残ります。
ヘッドホンでもスピーカーでも破綻しないのが利点です。
考え方はバイノーラルを超えて。
無指向性AB方式マイクの立体的な魔力と未来にあります。
空音開発の P-86S と X-86S は、この三つ目の方式で作っています。
ささやきの距離で使う前提で、二本を一体にしてあります。
自作について
頭部の模型に小型のマイクを埋める形の自作例は、以前から知られています。
難しいのは模型の造形ではなく、左右のマイクの特性をそろえるところです。
同じ型番でも個体差があるため、複数買って測って選ぶ工程が要ります。
測るところまで含めて楽しめる方には向いた工作です。
作品の納期が先にある方には、既製品を買うか、方式を変えるほうが早い場面が多くなります。


