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音響工学 · 2026.09.17

純正律と平均律の違い|ピタゴラス律まで、セントで見て聴いて分かる

ピタゴラス律は5度を美しく、純正律は和音を美しく、平均律はどの調でも同じにします。3つとも正しく、目的が違うだけです。セントの差を表で並べ、全員がチューナーで合わせても和音が濁る理由まで説明します。

目次

3つの違いは一行で言えます。
ピタゴラス律は5度を美しく、純正律は和音を美しく、平均律はどの調でも同じにします。
何かを取れば、何かを捨てます。
3つとも正しく、目的が違うだけです。

音律を聴き比べると、同じ和音がどれだけ違って鳴るかが分かります。
読むより速いので、先に聴いてから戻ってきても構いません。

なぜ音律という問題が起きるのか

オクターブは周波数が 2 倍です。
5度は 3 対 2 です。
この 2 つは耳にとって特別に安定した比で、どの文化の音楽でも土台になっています。

問題は、5度を積み上げてもオクターブにぴったり戻らないことです。
5度を 12 回積むと元の音から 7 オクターブ上に来るはずですが、実際には少しだけ行き過ぎます。
この差は約 23.5 セントあり、ピタゴラスコンマと呼ばれます。

つまり、オクターブと5度の両方を完全に保つことは、数学的にできません。
どこかにずれを押し付けることになります。
そのずれをどこに置くかの答えが、音律です。

ピタゴラス律:5度を積む

完全5度をすべて 3 対 2 の正しい比で積み上げます。
5度と4度は完全に澄みます。

代わりに、長3度が 81 対 64 になり、平均律より約 8 セント高くなります。
3度を重ねると濁ります。
中世の音楽で3度が不協和とされ、5度と8度で終わる響きが好まれたのは、この音律で演奏していたためです。

弦楽器の開放弦の調弦は、いまもこの考え方です。

純正律:和音を溶かす

和音を作る音を、簡単な整数の比でそろえます。
長三和音は 4 対 5 対 6 になります。

このとき、うなりが完全に消えます。
3 つの音が 1 つの音のように聞こえます。
合唱と金管アンサンブルが到達できるあの響きは、この状態です。

代わりに、転調ができません。
ある調に合わせて比を決めると、別の調では比が崩れます。
鍵盤楽器のように音の高さを演奏中に変えられない楽器では、これが致命的になります。

平均律:どの調でも同じにする

1 オクターブを 12 等分します。
どの半音も同じ幅になり、どの調へ転調しても響きが変わりません。

代わりに、オクターブ以外のすべての音程がわずかにずれます。
5度はほぼ正しいままですが、3度は大きくずれます。

セントで見る差

1 セントは半音の 100 分の 1 です。
人が音程の違いに気づき始めるのは、およそ 5 セントから 10 セントあたりです。

音程純正律の比平均律との差ピタゴラス律との差
完全5度3:2+2 セント+2 セント
完全4度4:3-2 セント-2 セント
長3度5:4-14 セント-22 セント
短3度6:5+16 セント+22 セント
長6度5:3-16 セント-22 セント
短6度8:5+14 セント+22 セント
短7度(属七の第7音)7:4-31 セント-
短7度(短三和音の上)9:5+18 セント-

見てのとおり、5度と4度はどの音律でもほぼ同じです。
差が出るのは3度と6度です。
だから、5度を合わせるのは簡単で、3度が難しいという実感は正しいのです。

「全員がチューナーで合わせたのに濁る」の正体

チューナーの目盛りは平均律です。
全員が針を真ん中にすると、長三和音の3度は純正律より 14 セント高い位置に来ます。
この 14 セントが、うなりとして聞こえます。

直し方は 1 つです。
3度を担当する人だけが、針から 14 セント低い位置を取ります。
根音と5度は動かしません。
全員が同時に動くと、合った位置が分からなくなります。

合奏でこれを練習する手順は吹奏楽の基礎合奏メニューにまとめました。

どの場面でどれを使うか

場面向いている音律理由
鍵盤楽器がいる平均律鍵盤が平均律なので、そこに合わせる
合唱・金管アンサンブル純正律各自が高さを動かせるので溶かせる
弦楽器の調弦ピタゴラス律開放弦の5度を正しく取る
転調の多い曲平均律どの調でも響きが変わらない
持続する和音純正律伸ばすほど、うなりが目立つ

実際の演奏では、混ざります。
伸ばす和音では純正律に寄せ、動く場面では平均律に近づける。
上手な団体が無意識にやっているのはこれです。

実際に聴いて確かめる

KUON TUNERでは、平均律、純正律、ピタゴラス律を切り替えられます。
主音を指定すると、目盛りのほうがその音律の位置へ動きます。

自分の楽器で同じ和音を 3 つの音律で吹き比べると、差は数字ではなく体験になります。
14 セントがどれくらいかは、聴いたほうが速く分かります。

二人以上で同じ音を伸ばすときは、合奏の画面でうなりの回数を数えられます。
440Hz で 14 セントのずれは、毎秒およそ 3.6 回のゆれになります。

ブラウザのチューナーの仕組みはオンラインチューナーの仕組みと選び方にまとめています。

よくある質問
純正律と平均律の違いを一言でいうと何ですか

純正律は和音がきれいに溶ける代わりに転調できません。平均律はどの調でも同じ響きになる代わりに、すべての音程がわずかにずれています。どちらが正しいということはなく、何を優先するかの違いです。

なぜ両方を満たす音律を作れないのですか

数学的にできないためです。完全5度を12回積むと、オクターブを7回重ねた高さより約23.5セント行き過ぎます。この差をピタゴラスコンマといいます。オクターブと5度の両方を完全に保つことはできないので、どこにずれを置くかを決めることになります。

純正律が気持ち悪いと感じるのはなぜですか

平均律に耳が慣れているためです。現代の録音とピアノはほぼすべて平均律なので、それが基準になっています。純正律の長3度は平均律より14セント低く、聴き慣れない位置に来ます。しばらく聴くと、逆に平均律の3度が濁って聞こえるようになります。

1セントはどれくらいの差ですか

半音の100分の1です。人が違いに気づき始めるのは、およそ5から10セントあたりとされます。純正律と平均律の長3度の差は14セントなので、伸ばす和音であればはっきり分かります。短い音では気づきにくくなります。

ピタゴラス律はいま使われていますか

弦楽器の調弦に残っています。開放弦を完全5度で合わせるのは、ピタゴラス律の考え方です。旋律を歌う場面でも、導音を高めに取る奏者は結果としてこの音律に近づいています。

吹奏楽ではどの音律を目指せばいいですか

伸ばす和音では純正律、動く場面では平均律に近づけます。現実には両方が混ざります。まず5度を合わせ、3度だけを針から動かす、という順番で練習すると、無理なく近づけます。

周波数の一覧はありますか

比から計算できます。基準の音の周波数に、完全5度なら1.5、長3度なら1.25、短3度なら1.2を掛けます。A=442Hz なら、その上の完全5度は663Hz、長3度は552.5Hzです。表を覚えるより、比を覚えるほうが応用が利きます。

432Hz と純正律は関係がありますか

別のものです。432Hz は基準の高さの話で、純正律は音と音の間隔の話です。基準を432Hzにしても、音律が平均律であれば和音の中のずれは変わりません。混同されやすいので、分けて考えてください。

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