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屋外で録音すると、風がマイクに当たり、低くうなる雑音が乗る。
風防を被せれば抑えられることは知られていても、覆いをどれくらい大きくし、何の布で何枚重ねればよいのか、そもそも風防の効果が何で決まるのかは、はっきりしなかった。
Bleazey(1961)は、球形の風防ほど風雑音が大きく減り、その減り方が覆いの体積で説明できることを示しました。
風防の効果は、なぜはっきりしなかったのか
風雑音とは、風によって生じる圧力の変動にマイクが反応して出る音のことです。
音としての圧力変化とは別に、風がマイクの振動膜を直接押し引きすることで、低い雑音になって録音に乗ります。
風防とは、音による圧力の変動はほぼ減らさずに通し、風による圧力の変動だけを強く減らす、マイクを覆うためのものです。
Bleazey(1961)が取り組んだ当時、屋外放送や拡声、音場の測定はしばしば風雑音に妨げられていました。
それにもかかわらず、マイクを風から守る問題はほとんど扱われておらず、風防の減衰量を覆いの大きさや素材と結びつける理論もありませんでした。
この研究が対象にしたのは圧力マイクロホンです。
振動膜の片面だけに音が当たる方式で、両面に音が当たる傾度型マイクロホンとは構造が異なります。
この区別は、あとで結論の及ぶ範囲を考えるうえで効いてきます。
マイクの型と指向性の選び方については、マイクは型と指向性でどう選ぶのか、その設計トレードオフの研究を読む にまとめています。
風防の効果を、どう測ったのか
測定は室内と屋外の両方で行われました。
室内では無響室を使います。
無響室とは、壁からの反射音を極力抑えるよう設計された部屋です。
そこへ風発生装置を置きました。
風発生装置とは、モーター駆動の羽根車で、繰り返し再現できる乱れた風の塊を作り出す装置です。
供試マイクは RCA BK-1A という圧力マイクロホンで、風発生装置から 4 ft の位置に置きます。
直径 2 in、4 in、8 in の球形風防を、付けない場合と付けた場合それぞれで、3 min ずつの応答を録音しました。
屋内の風発生装置を使うのは、条件を揃えて繰り返し測れるからです。
ただし、風防が 8 in より大きくなると、風防の内側に生じる風雑音が羽根車やモーターの音と同程度になり、区別できなくなりました。
そこで、それより大きな風防は屋外の自然の風で測ります。
屋外では、特性を揃えた RCA BK-1A を並べ、一方を基準に、もう一方に試験する風防を付けました。
風の吹き込みに合わせて、風防の直径ごとに 60 回の読み取りを、約 30 sec 間隔で行いました。
風速は、直径 2 in と 4 in の風防では 5〜20 mph、それより大きな風防では 20〜30 mph の条件が使われています。
素材の比較には、半径 1 in の球形風防を使いました。
細かい網目の絹を 1 枚から 5 枚まで重ねたもの、モンクスクロス、60 mesh/in の綿布をそれぞれ試しています。
あわせて、風防や覆いの素材によって周波数特性がどう変わるかも測りました。
風はランダムに変動するため、著者は有意なデータが理想化された理論だけではなく、実際の風の条件での実験に基づくべきだと判断しました。
風防の大きさと素材は、風の音にどう効くのか
風防が風雑音を減らす量は、球形風防の半径が大きいほど、また覆いの体積の対数に比例して増えました。
圧力マイクロホンと適度な風の条件では、減衰量が次の経験式で表されています。
減衰量 (dB) = 6.77 log10 V + 10.4
ここで V は風防の体積(立方インチ)で、風防の内側にあるマイク自身の体積を差し引いた値です。
また、風に対してマイクが生じる電圧は、風防の半径に反比例しました(e1/e2 = r2/r1)。
半径を大きくするほど、風が直接当たる量が減っていく、ということです。
覆いの素材では、細かい網目の絹を1枚張るだけで十分な効果がありました。
絹を複数枚重ねても、風雑音の減り方はわずかに増えるだけでした。
絹、モンクスクロス、60 mesh/in の綿布は、風の吹き込みを抑える効果がほぼ同等でした。
ただし、音の高域への影響には差が出ました。
モンクスクロス、綿布、絹の複数枚は、絹1枚よりも高域の音を大きく減衰させました。
この結果は、どこまで当てはまるのか
著者自身が明示した限界があります。
第一に、この結論は球形の風防を圧力マイクロホンに使い、適度な強さの風の条件で得られたものです。
傾度型マイクロホンには、そのまま厳密には当てはまりません。
第二に、風速や周波数、風の向きといった変数の多くは制御されておらず、あらゆる風の条件を網羅するものではありません。
第三に、半径 1 in より小さい球形風防は、マイク前面の半径が 1 in あるため完全に覆えず、測定できませんでした。
第四に、8 in より大きい球形風防は、風防の内側の風雑音が羽根車やモーターの音と同程度になるため、屋内の風発生装置では測れませんでした。
この研究を、どう位置づけるか
風防の実用上の重要性に対して、その効果を覆いの大きさや素材と結びつける知見が乏しかった時代に、この研究は減衰量を覆いの体積の対数で表す経験式と、風に対する電圧が半径に反比例するという関係を示しました。
あわせて、覆いの素材については、細かい網目の絹1枚で十分であること、重ねたり厚い素材を使ったりしても風雑音の低減はわずかにしか増えず、むしろ高域の音への影響が大きくなることを明らかにしました。
この研究の特徴は、理想化した理論だけに頼らず、実際の風の条件での実験を優先した点です。
圧力マイクロホンと球形の風防という範囲をはっきり区切ったうえで、それまで理論の裏付けがなかった風防の選び方に、定量的な目安を渡した仕事として位置づけられます。
参考資料
原典の主張は、Experimental Determination of the Effectiveness of Microphone Wind Screens をご参照ください。

