空音開発Kuon R&D
楽典と音楽 · 2026.08.23

ジャズ ヴォイシング|ルートを省き、3度と7度から積む手順

コードを弾いてもジャズに聞こえない。その原因は低い位置に積みすぎた根音と5度にあります。根音を省き、3度と7度のガイドトーンから4声を積む手順を、II-V-I の進行で解説します。

目次

ひとつのコードネームから、根音を省いたジャズらしい押さえ方を、自分で組み立てられるようになります。

コードを弾いてもジャズに聞こえない、という悩みを、音の積み方の考え方から解きます。

この記事で扱うのはヴォイシングです。

こんにちは。

音楽家の朝比奈幸太郎です。

よかったらまずは、Kuonに無料登録してみませんか?
音楽家に必要な機能がすべてブラウザで統合されていて、難しいインストールやPCの知識はもう不要になり、あなたの創造性、そして音楽制作や練習だけに専念できるようになります!

ヴォイシングはコードの何を決めるのか

ヴォイシング(voicing)とは、和音の構成音をどの順に、どの高さで積むかを決めた配列のことです。

コードネームが音の集合を指すのに対し、ヴォイシングはその並べ方まで決めます。

同じ C7 でも、並べ方が変われば響きは別物になります。

C7 の構成音は、根音(root)の C、3度(third)の E、5度(fifth)の G、7度(seventh)の Bb の4音です。

C7 の構成音
役割音名はたらき
根音(root)C土台。和音の名前の由来
3度E長調か短調かを決める
5度G厚みを足す。性格への影響は小さい
7度Bb解決先を強く意識させる

この4音のうち、和音の性格を決めるのは3度と7度の2音です。

この2音をガイドトーン(guide tone)と呼びます。

なお、四声体(four-part writing)では各声部を独立した旋律として扱いますが、ヴォイシングは和音をひとつの塊として扱い、その配置と前後のつながりを考えます。

声部の独立性より、塊としての響きを優先するのが特徴です。

なぜ根音を省くとジャズらしくなるのか

ピアノでコードを弾いてもジャズに聞こえない、という悩みの多くは、低い位置に根音と5度を積みすぎていることにあります。

ジャズでは根音と5度をベース(低音楽器)が担当します。

ピアノが同じ低音を重ねると、響きが濁り、全体の動きが重くなります。

そこでピアノ側では根音と5度を省き、3度と7度だけを残します。

これがルートレスヴォイシング(rootless voicing)です。

省いた2音のぶん、空いた指に別の音を足せるのも利点になります。

ガイドトーンからどう積むのか

手順は次の4段です。

  1. コードネームから3度と7度を取り出す。
  2. この2音を、前後のコードと半音か同音でつながる位置に置く。
  3. 根音と5度は省く。
  4. 空いた指にテンション(tension)を足して4声にする。

II-V-I(ツーファイブワン)の進行で確かめます。

Dm7、G7、Cmaj7 と進む、ジャズで最も基本的な動きです。

まず、3つの和音の3度と7度を書き出します。

II-V-I のガイドトーン
和音3度7度
Dm7FC
G7BF
Cmaj7EB

3度の列に注目すると、F、F、E と動きます。

Dm7 の3度 F は、G7 の7度と同音です。

その次に、Cmaj7 の3度 E へ半音下がります。

7度の列は C、B、B です。

Dm7 の7度 C が G7 の3度 B へ半音下がり、Cmaj7 の7度 B に同音で留まります。

半音と同音でできたこの2本の線が、ジャズの進行を滑らかにしている正体です。

3度と7度をこの線に沿って置くだけで、コードを弾いてもジャズらしい動きになります。

空いた2音にはテンションを足します。

Dm7 なら9度の E、G7 なら9度の A、Cmaj7 なら9度の D といった具合です。

テンションの読み方と選び方は、テンションコード 意味|9、11、13 が示す音と読み方 に詳しく書きました。

なぜ3度と7度だけで性格が決まるのか

3度は長調か短調かを決める音です。

C の上に E が乗れば長調、Eb が乗れば短調になります。

7度は、その和音がどこへ解決したがるかを決めます。

Bb のように短7度(minor seventh)なら属七(dominant seventh)の緊張が生まれ、B のように長7度(major seventh)なら落ち着いた響きになります。

つまり3度と7度の2音だけで、長短の区別と解決の方向という、和音の機能の大半が決まります。

逆に5度はこの2音の性質を左右しません。

5度を省いても和音の性格はほぼ変わりません。

これが、根音と並んで5度を省ける理由です。

根音を省くのは、低音をベースに任せるという役割分担の考え方です。

和音の名前は根音から付きますが、実際の低音をピアノが弾く必要はありません。

迷ったときはどう判断するのか

ルートレスにすると、コードネームとは別の和音に見えることがあります。

Am7 の構成音は A、C、E、G ですが、根音 A を省くと残りは C、E、G です。

これは C の和音と同じ形です。

迷ったときは、前後の文脈と、ベースが鳴らしている低い音で判断します。

ベースがいる編成なら根音を省きますが、ピアノ独奏のように低音を誰も弾かない場合は根音を残します。

省くかどうかは、その場にベースがいるかで決まるのです。

テンションにも、足してよい音と避ける音があります。

メジャーセブンス(maj7)に11度を足すと、3度と長2度でぶつかって濁ります。

属七には b9、#9、b13 といったオルタードテンション(altered tension)も使えますが、解決直前の属七に限られます。

詳しくは ドミナントセブンス 解決|V7 と G7、次に進む先の決め方 を参照してください。

4声を積んだら、音域が偏らないよう広げる方法がドロップ2(drop 2)です。

密集した4声から上から2番目の音を1オクターブ下げるだけで、響きに広がりが生まれます。

コードネームを左から順に解く読み方に慣れていない場合は、コードネーム 読み方|Cm7b5 を左から順に解く手順 が助けになります。

あなたのコードの3度と7度はどこにあるか

あなたが今弾いているコードの3度と7度は、それぞれどの位置にありますか。

その2音を、次のコードへ半音か同音でつなぐと、どの線が浮かび上がりますか。

この記事が属するシリーズ

関連記事

ジャーナルへ戻る