目次
ひとつのコードネームから、根音を省いたジャズらしい押さえ方を、自分で組み立てられるようになります。
コードを弾いてもジャズに聞こえない、という悩みを、音の積み方の考え方から解きます。
この記事で扱うのはヴォイシングです。
こんにちは。
音楽家の朝比奈幸太郎です。
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ヴォイシングはコードの何を決めるのか
ヴォイシング(voicing)とは、和音の構成音をどの順に、どの高さで積むかを決めた配列のことです。
コードネームが音の集合を指すのに対し、ヴォイシングはその並べ方まで決めます。
同じ C7 でも、並べ方が変われば響きは別物になります。
C7 の構成音は、根音(root)の C、3度(third)の E、5度(fifth)の G、7度(seventh)の Bb の4音です。
この4音のうち、和音の性格を決めるのは3度と7度の2音です。
この2音をガイドトーン(guide tone)と呼びます。
なお、四声体(four-part writing)では各声部を独立した旋律として扱いますが、ヴォイシングは和音をひとつの塊として扱い、その配置と前後のつながりを考えます。
声部の独立性より、塊としての響きを優先するのが特徴です。
なぜ根音を省くとジャズらしくなるのか
ピアノでコードを弾いてもジャズに聞こえない、という悩みの多くは、低い位置に根音と5度を積みすぎていることにあります。
ジャズでは根音と5度をベース(低音楽器)が担当します。
ピアノが同じ低音を重ねると、響きが濁り、全体の動きが重くなります。
そこでピアノ側では根音と5度を省き、3度と7度だけを残します。
これがルートレスヴォイシング(rootless voicing)です。
省いた2音のぶん、空いた指に別の音を足せるのも利点になります。
ガイドトーンからどう積むのか
手順は次の4段です。
- コードネームから3度と7度を取り出す。
- この2音を、前後のコードと半音か同音でつながる位置に置く。
- 根音と5度は省く。
- 空いた指にテンション(tension)を足して4声にする。
II-V-I(ツーファイブワン)の進行で確かめます。
Dm7、G7、Cmaj7 と進む、ジャズで最も基本的な動きです。
まず、3つの和音の3度と7度を書き出します。
3度の列に注目すると、F、F、E と動きます。
Dm7 の3度 F は、G7 の7度と同音です。
その次に、Cmaj7 の3度 E へ半音下がります。
7度の列は C、B、B です。
Dm7 の7度 C が G7 の3度 B へ半音下がり、Cmaj7 の7度 B に同音で留まります。
半音と同音でできたこの2本の線が、ジャズの進行を滑らかにしている正体です。
3度と7度をこの線に沿って置くだけで、コードを弾いてもジャズらしい動きになります。
空いた2音にはテンションを足します。
Dm7 なら9度の E、G7 なら9度の A、Cmaj7 なら9度の D といった具合です。
テンションの読み方と選び方は、テンションコード 意味|9、11、13 が示す音と読み方 に詳しく書きました。
なぜ3度と7度だけで性格が決まるのか
3度は長調か短調かを決める音です。
C の上に E が乗れば長調、Eb が乗れば短調になります。
7度は、その和音がどこへ解決したがるかを決めます。
Bb のように短7度(minor seventh)なら属七(dominant seventh)の緊張が生まれ、B のように長7度(major seventh)なら落ち着いた響きになります。
つまり3度と7度の2音だけで、長短の区別と解決の方向という、和音の機能の大半が決まります。
逆に5度はこの2音の性質を左右しません。
5度を省いても和音の性格はほぼ変わりません。
これが、根音と並んで5度を省ける理由です。
根音を省くのは、低音をベースに任せるという役割分担の考え方です。
和音の名前は根音から付きますが、実際の低音をピアノが弾く必要はありません。
迷ったときはどう判断するのか
ルートレスにすると、コードネームとは別の和音に見えることがあります。
Am7 の構成音は A、C、E、G ですが、根音 A を省くと残りは C、E、G です。
これは C の和音と同じ形です。
迷ったときは、前後の文脈と、ベースが鳴らしている低い音で判断します。
ベースがいる編成なら根音を省きますが、ピアノ独奏のように低音を誰も弾かない場合は根音を残します。
省くかどうかは、その場にベースがいるかで決まるのです。
テンションにも、足してよい音と避ける音があります。
メジャーセブンス(maj7)に11度を足すと、3度と長2度でぶつかって濁ります。
属七には b9、#9、b13 といったオルタードテンション(altered tension)も使えますが、解決直前の属七に限られます。
詳しくは ドミナントセブンス 解決|V7 と G7、次に進む先の決め方 を参照してください。
4声を積んだら、音域が偏らないよう広げる方法がドロップ2(drop 2)です。
密集した4声から上から2番目の音を1オクターブ下げるだけで、響きに広がりが生まれます。
コードネームを左から順に解く読み方に慣れていない場合は、コードネーム 読み方|Cm7b5 を左から順に解く手順 が助けになります。
あなたのコードの3度と7度はどこにあるか
あなたが今弾いているコードの3度と7度は、それぞれどの位置にありますか。
その2音を、次のコードへ半音か同音でつなぐと、どの線が浮かび上がりますか。


