目次
楽譜に記された I、V6、IV といった記号。
和声の教材を読み始めた人が最初に戸惑うのが、このローマ数字の和音記号です。
こんにちは、音楽家の朝比奈幸太郎です。
本記事では、調が確定していることを前提に、記号の読み方、大文字と小文字の区別、転回形を示す数字の意味までを手順で説明します。
和音記号とは何か
ローマ数字の和音記号(和声記号とも呼ばれます)は、ある調の中で、音階の第何音の上に積まれた和音かを表す記法です。
コードネーム(C、G7 など)が絶対的な音名で和音を指定するのに対し、和音記号は調の中での役割を表します。
そのため調が決まっていなければ、I や V がどの和音を指すのかは決まりません。
三和音の基本的な記号を、ハ長調を例に示します。
大文字(I、IV、V)は長三和音、小文字(ii、iii、vi)は短三和音、小文字に度の記号(°)を付けた vii° は減三和音です。
この大文字と小文字の使い分けは、19世紀後半のドイツの理論家フーゴー・リーマンによって広められたとされています。
和音記号をどう読むか
実際に楽譜に当たる際の手順を三つの段階に分けます。
第一に、調を確定します。
調号と終止の音を手がかりにします。
調を決めるには五度圏の仕組みが役立ちます。
第二に、和音を構成する音を積み重ね(1度、3度、5度の3音を基本とします)、根音が音階の第何音にあたるかを数えます。
第1音なら I、第5音なら V です。
第三に、バス(最低音)が根音と一致するかを確かめます。
一致すれば基本形なので、三和音の場合は数字を付けません。
一致しなければ、バスが和音の何度の音かを判定し、対応する数字を添えます。
三和音の転回形に添える数字は次のとおりです。
四和音(七の和音)の場合は転回形がさらに一つ増えます。
V7 を例にとると、基本形(V7)、第一転回(V65)、第二転回(V43)、第三転回(V42 または V2)です。
なぜ数字が付くのか
転回形に添える数字は、数字付き低音に由来します。
バロック時代、通奏低音の奏者はバスの上に書かれた数字を見て、どの音程を積むべきかを即座に判断していました。
たとえば「6」という数字は、バス音の上に6度の音程を積めという指示です。
和音記号の I6 は、バスに置かれた第3音の上に6度(バスから数えて6度上の音、つまり根音)が乗っている状態を表します。
そこから転用されました。
三和音の第一転回では、バスの上に3度と6度の音程が生じますが、3度は省略されて6だけが残りました。
第二転回では4度と6度が生じるため、64(4分の6と読みます)と書きます。
七の和音でも同じ原理で、生じる音程の数字を並べています。
この仕組みを理解すれば、数字の丸暗記から解放されます。
つまずきやすい点
コードネームとの混同に注意してください。
コードネームの C や G7 は絶対的な音名です。
和音記号の I や V7 は調の中での相対的な位置です。
同じ G7 でも、ハ長調では V7、ト長調では I7 です。
両者の違いについて詳しくは「[ドミナントセブンス 解決。
V7とG7、同じ和音がなぜ二つの名前を持つのか](/journal/dominant-seventh-resolution-v7-g7)」を参照してください。
短調の場合、第7音に臨時記号が付いて導音になることで和音記号にも変化が現れます。
イ短調の V は自然短音階のままでは Em(エム)ですが、第7音ソにシャープが付くことで E(長三和音)になります。
この場合でも記号は V のままです。
導音への変化は、短調の和声的前提として織り込み済みだからです。
vii° と VII の違いにも注意が必要です。
長調の第7音上の三和音は減三和音(vii°)ですが、短調の自然短音階での第7音上は長三和音(VII)です。
教材によっては短調でも導音を前提に vii° と書く流派もあります。
使っている教材の流儀を最初に確認しておくと安全です。
また、添える数字の書き方にも流派による差があります。
I64 と書く場合と I の右上に小さく 6 と 4 を縦に並べて書く場合があります。
どちらも同じ第二転回を指します。
では、あなたが今取り組んでいる曲の最初の8小節を、和音記号で書き出してみてください。
調は何か、各和音の根音は音階の第何音か、バスは根音かどうか。
手順に沿って一つずつ確かめると、教材の説明が読めるようになっているはずです。
独学で止まったときに人に聞く場所の選び方は大人の音楽教室はどこがいいにまとめています。
